茶名披露の茶事

実家にて:2002(平成14)年11月10日

実家において私が亭主となり茶事をしたのは計3回、過去の記録を紐解けば、2002年11月10日、2003年11月24日、2005年10月17日であった。

2002年の折は茶名披露の茶事で、社中の先輩I氏とともに亭主を務めた。このI氏、少々変わり者で「そちらの茶名披露に便乗することにしよう」と事もなげに言い、それはそれで私の肩の荷は半分となり、ありがたいことであった。この御仁、古美術蒐集家として古美術商、所謂さびやの間では有名である。

さて、茶事の日程もとんとんと決まり、師を正客に社中の方々を招待することになった。3、4か月の間、I氏と道具組の相談を重ね、また足りない道具を清水の舞台から飛び降りる心境で購入し、円座、路地草履、柄杓などを新しくするなどした。度々実家に帰っては、当日の動線の確認や掃除につとめ、落ち着かない日々を過ごした。鳴らしたことのない銅鑼の叩き方も学ばねばならなかった。

実家までは特急列車に乗り師の家からはおよそ2時間半、特急指定券と乗車券をお渡しすると、修学旅行を前にした女学生のようにはしゃがれたことが思い出される。

当日、I氏は待合の軸、茶入、茶杓、濃茶茶碗などを携え、客人より2本早い特急に乗ってやってきた。亭主の醍醐味はこの日のために心をこめて準備してきたおもてなしを客人に喜んでいただくことにある。この日は道具組に込めた私たちの感謝の思いもお伝えすることができ、晩秋の一日を楽しまれた客人を送り出すことができた。茶事のあとI氏とともに祝杯をあげたものである。

以来、いつの間にか10数年が経過してしまった。 道具は直前に変えたものもあり、手元の控えは私の記憶とはいささか異なる。以下、覚えているだけの道具組を記しておこう。

 

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待合 

  • 床    禅機図
  • 汲出茶碗 高取
  • 煙草盆  井桁煙草盆 
  • 火入れ  麦藁手

 

初座

  • 軸  「楠下」大徳寺第378世 無学宗衍筆
  • 釜   天猫
  • 炭 斗 茶縒篭 江戸時代
  • 灰 器 赤楽:七代長入作

 

懐石

  • 折 敷 溜塗四方隅切 明治時代
  • 四 椀 真塗  
  • 汁 椀 
  • 煮物椀    金彩松葉溜塗椀(海老真蒸・京人参・青菜・柚子)
  • 向 う 鶴染付 永楽和全造 江戸末(鮃コブ〆・菊花)
  • 燗 鍋 糸目燗鍋・蓋:呉須 江戸時代
  • 焼物鉢 焼〆皿(鯛卵黄そぼろ焼)
  • 預徳利 備前油徳利 江戸時代
  • 預け鉢 高麗青磁 13世紀(湯葉巻:京人参・山芋、三つ葉で結んで)
  • 預け鉢 (白和え:春菊・人参・蒟蒻)
  • 八 寸 (キャビア百合根、大根柚子巻甘酢)
  • 香物鉢 (白菜、沢庵)
  • 縁 高 「真久路奴梨利休好婦知高」木村表斎 明治時代 

 

後座(続き薄茶) 

  • 花 入  古銅耳付    桃山時代西王母・マンサク照葉)
  • 水 指  丹波一重口   桃山時代
  • 茶 入  織部耳付茶入  桃山時代
  • 濃茶茶碗 鬼熊川     李朝時代
  • 茶 杓  片桐宗猿 
  • 煙草盆  手付溜塗煙草盆 江戸末
  • 干菓子器 刳盆      明治時代
  • 薄茶器 「遠山」湯浅華暁
  • 茶 碗  黒楽:了入造
  • 次茶碗 「よねばかり」古唐津 桃山時代