正午の茶事

実家にて

コロナ禍のため二度延期となった茶事が、11月20日にようよう実現した。妹念願の恩師を招いての茶事である。

紅葉は真っ赤という訳にはいかなかったが程々で良いのだろう。

11時の席入りに30分ほど遅れ、93歳の正客は社中の弟子お二方に両側を支えられ、車から降りてこられたという。近年は足が弱り正座も難しくなり、妹は立礼式のテーブルと椅子を特注したのだった。

 

卓は懐石膳と煮物椀ほか畳の上と同様に置くことができるサイズで、しかも組み立て式、よく考えられたものであった。

さてこの日の客は3名。水屋方は妹の主人が半東をつとめ私が懐石を担う、いつもながらの亭主含めて3名の布陣。今出来ることにつとめながらも、バタバタとしつつ進行した。

 

懐石

  • 向う(永楽和全造 鶴向付) ヒラメ昆布〆、いくら、菊花
  • 飯碗(根来椀) 栗おこわ
  • 汁椀(根来椀) 湯葉、むかご
  • 煮物椀(不老萬年蒔絵黒煮物椀) 海老真丈、日の出人参、椎茸、青菜、柚子
  • 進肴(小泉淳作造 黄瀬戸銅鑼鉢) 鰆の柚子味噌焼、松葉銀杏、里芋、南瓜、香物
  • 小吸物椀 松の実

折敷は扇面(時代鎌倉彫)、四椀は江戸初の根来椀。コロナ禍にあり、進肴、八寸など取り回しは控えた。

茶事の最中は撮影する余裕がなく、画像は客を送り出した後に空腹の妹夫婦のため急ぎ盛り付けたもの。次回は正客に持ち出す前になんとか撮影したいものだ。

本席は言わずもがなだが、懐石の道具も正客のますますの健康を願い、お目出度い器を揃えた。向こうは永楽の鶴向付、煮物椀は霊芝の高蒔絵が蓋裏を飾る。

時代の道具に混じり、日本画家として名を馳せた小泉淳作氏(1924-2012)の黄瀬戸銅鑼鉢が客に違和感を与えないか心配であったが、桃山にならった作であり、しかも古刹の建長寺建仁寺の天井画、東大寺の襖絵を手掛けた画家であることから席中の話題となり、時代の器ともうまくつなぐことが出来たようである。

寄付き、本席の道具は妹夫婦所持のため掲載は控えるが、茶碗荘りの趣向、正客から贈られた茶碗が主役であった。花は西王母とトサミズキの照葉、花入は室町の古銅耳付、こちらは私の所持、記録のために掲載する。