『誰か Somebody 』 宮部みゆき

izaatsuyoshi2012-01-09


2012年の最初の3連休は、静岡県牧之原市に旅することになった。

例によって、相良のお気に入りの書店を訪ね、『誰か Somebody 』(宮部みゆき著/文春文庫)を購入する。昨年末にこの書店で手にした『名もなき毒』のシリーズ前作にあたるものだ。

主人公は大財閥今多コンツェルンの会長の愛娘と結婚し、同社広報室に編集者として勤務する杉村三郎。

財閥の娘とは知らずに恋におち、裕福な結婚生活を送ることになってしまった杉村だが、本人は極めて小市民的な性格の人物である。妻から、4歳になる娘の稽古事の送迎に運転手を雇用したいが、と身の丈に合わない相談を持ちかけられ呻吟する。しかし一方、人生の重荷を背負って歩く人々には、結婚によって幸運を授かった杉村の存在は苦々しくも映る。

『誰か Somebody』 も一昼夜で読み終えた・・・。

今多コンツェルン会長の運転手が自転車によるひき逃げ事故で亡くなった。運転手の二人の娘から、犯人捜査のため父の生涯について本を出したいとの相談を受けた杉村は、一見平凡な運転手の謎に満ちた生涯をさかのぼる。両親が関係した秘密の出来事は、娘たちの人間形成に大きな影響を与え、知らないうちに二人の人生に影を落としていた。

刑事でもなく探偵でもない杉村は、入り口は小さくとも奥の深い事件に巻き込まれ、いつしか真相に近づいていく。『名もなき毒』同様、登場人物の心の闇は終盤にありえない形で終結する。

誰か―Somebody (文春文庫)

誰か―Somebody (文春文庫)

朝、釣り人たちが竿をかざす相良の海岸を歩く。獲物がかかるまで無心で糸を垂らす釣り人たちは身の程にあった幸福に身を置き、またいくばくかの苦悩を抱えていることだろう。人生は万人共通に、山があり谷があるのだから。

「相良の海岸 2」2011年12月 http://d.hatena.ne.jp/izaatsuyoshi/20111223