2009-01-01から1年間の記事一覧

韋駄天M氏のコート

今年も残りわずかとなった。寒風を尻目に彼のM氏、いまだコートを着ようとしない。この秋からカバンをザックに替え「背中はこれで完全暖房だあ」と居直る始末だ。近頃はマフラーを2本首にまきつけ、両手をポケットにつっこみ、風を切って歩いている。かつて…

クリスマス

母や妹とクリスマスツリーの飾り付けをしたのは楽しい思い出である。モミの木は育ち、5年ほどで天井につかえる大きさとなり、新しい木に買い替えたものだ。地植えにした3本のモミの木は、今では実家の庭に聳え立っている。今年の我が家を彩るのは小さなツリ…

誕生日を祝う

日本橋「八ツ花」で連れの誕生日を祝う。「八ツ花」は連れ気に入りの店で美味い天麩羅を食べさせてくれる。師走も半ば、忘年会も多いのだろう、不況の時勢ながらこの店は常連客で賑わっている。突き出しの烏賊の塩辛は絶品であった。寒くなるほど烏賊は美味…

山上の茶事(弐)

11月末の土曜、鎌倉は某数寄者宅で茶事が開かれた。山上にある茶室周りのモミジの色づきはまだ浅いが、そこかしこの広葉樹は賑やかに色づいている。亭主と客の5人はいずれも男性。席入りは12時半、懐石ののち中立ちがあり、続く後座は濃茶、後炭、薄茶の流れ…

海蔵寺

日本庭園の図面を見るのも、名園を訪れるのも好きだ。自宅の庭で、土にまみれて樹木を動かすのはもっと好きである。さて、先の土曜(7日)朝から鎌倉を歩く。天候にも恵まれ、鎌倉に古くから続く大きな家々とそれらをやんわりと囲み込むような独特の低い山並…

美味い店 立原

久しぶりに立原へ行く。古備前徳利を携えて、立原さんと盃を交わそうという連れであったが、残念ながら朝からの雨に断念。美術品の運搬は、傘で手のふさがる雨の日はさけたいものだ。しかし石盃だけは忘れずに、気に入りの斑唐津と黄瀬戸六角を持ち込んだ。…

法事の献立

妹の嫁ぎ先の舅が逝去して3年が経った。優しい、そして照れるような舅の笑顔を思い出す。妹から、舅の3回忌の法事を自宅で行うことにしたと電話があったのは、一月ほども前のことだ。客を手料理でもてなしたい、ついては手伝ってはくれまいかと言う。舅は妹…

美味い店 季節料理 まき

金曜の夕刻、横須賀線で向かうは、鎌倉の料理屋「まき」。久しぶりで味わう「まき」の料理に、日中からいそいそとしたものだ。のれんをくぐれば、主人の笑顔が迎えてくれた。 一足先に到着した連れはカウンターの中ほどに陣取り、早やビールを開けている。突…

酸っぱさや 目覚めの供に 花ラッキョウ

先日のこと、無類のラッキョウ好きから携帯に画像が入った。 「旅のお供に選んだ恵比寿のロング缶とラッキョウの瓶詰」 と添えられている。合成甘味、保存料を一切使わず、甘さは蜂蜜のみ、福井産3年ものの甘酢漬だそうだ。ひと瓶には小さなラッキョウが約10…

料理熱

このところ、M氏の料理熱は高まる一方である。本日はオードブルからお得意の麻婆豆腐まで、4品の披露となった。まずは忍者ハットリ君のシシ丸よろしく「ちくわだわん!」をうわ言のように繰り返しながら、胡瓜の皮をひき、竹輪につめて斜めに切り、唐津向う…

蒔絵盆

ある店に南北朝様式の蒔絵盆があるが興味があるか、と知人から電話が入った。茶事懐石を手掛けるあなたなら、如何様にも使えるだろう、と声の主。時代は幕末ほどもあろうか。5枚組の盆は小振りで、銀彩の縁取りと南天の意匠があった。金、銀の粉溜を施した絵…

秋を歩く

例年、9月の連休は北アルプスを歩いている。今年は2年ぶりに鹿島槍に登るはずだった。高山はすっかり秋の装いに包まれていることだろう。海外に旅発つことになった私に、一人で山に入るかもしれないと言っていた連れは、結局、この連休を仕事に費やした。さ…

モン・サンミッシェル ブニュエル「銀河」

ルイス・ブニュエルの映画「銀河」(1969年)を見たのは、池袋文芸座のブニュエル3本立のうちの1本であったか…いずれにしろ学生時代のことで記憶は定かではない。質素な身なりで巡礼の旅を続ける二人の男。時と空間は交錯し、あるときは創世記のエルサレム、…

M氏、麻婆豆腐を作る

久しぶりに渡欧、8つの夜を超えてようよう帰国した。さて、成田まで出迎えに来てくれたM氏、到着時間に遅れが出、1時間半も到着ロビーで待ちぼうけをくった。 「何度も係の人に場所と時間を確認してさッ、出てくる人を目で追ってたら、雪目ならぬ人目にな…

蛸ピーマン

生姜は微塵切り、大蒜、長ネギは小口に切って、ピーマンは短冊だ…と、突然、包丁捌きも鮮やかに台所を立ち回るM氏がぼやいた。「なんだ、このピーマンは! 古いな、木偶の棒百貨店のデパチカ担当に言っといたがいいゼ、ったくよ!」 食材のチェックに容赦が…

大糸線にて笑う

祖母谷温泉での早朝の目覚め…昨夜からぐっすりと眠り、気分がいい。連れを起こし、内風呂に向かう。かけながしの湯は、同時に水がそそがれており、ぬるめの温度になっている。露天も良いが、大きな石の湯船のあるこの内風呂は、秘湯の趣きがあり、なかなか良…

祖母谷に泣く

8月7日、ムーンライト信州(夜行)にて白馬へ向かう。早朝5時40分、白馬駅に降り立った。改札をぬけると「おい、見ろよ!」と連れが正面の空を指差した。なんと虹だ、曇り空にかかる虹に気分も高揚したものだ。今回の山行は、1日目(8/8)に栂池から白馬山頂…

朝茶事

最期に茶の湯の師を訪ねてから、かれこれ半年以上も経つだろうか。ここ2年ほど茶事もおろそかにし、点前座にすわることも稀となった。自転車と同じ、点前作法は身体が覚えているものと勝手に思い込んでいたが、先般、袱紗を手にとり、これまでにない違和感…

美味い店 八ツ花

「八ツ花の天麩羅が食べたいなあ」と、連れの口から時折こぼれる言葉。美味いものに舌鼓を打ちたいのは、こちらも同様。この店の天麩羅はかりっと揚がり、素材そのものを味わえる。暑さも一段落の夕刻7時過ぎ、日本橋八ツ花ののれんをくぐる。連れはすでに…

エンジョイ!夏ペンギン

「新、海シリーズが出た!」と、Mからメールあり。添付された画像には、波打ち際に座り、釣竿をかざすペンギンが一羽…。今春、「つながるヨガペンギン」で話題を呼んだ、天然水 From AQUA のこの夏のおまけ、「エンジョイ!夏ペンギン」(全8種)である。…

熱海「起雲閣」

温泉好きの我ら、本日は久しぶりに熱海へと向かうことにした。熱海は、1200年前に箱根権現の万巻上人が海中温泉の泉脈を移し湯前神社を創建、なみなみと湧くその湯を広く開放したといわれる、歴史のある温泉地だ。さて、昼過ぎに熱海駅に到着。まずは料…

江戸前鮨

銀座界隈、旨い鮨屋が何軒もあるが、このところの我々の気に入りは、S駅近くの鮨屋である。先日、老舗古美術商から治兵衛の朱盃を手に入れ、今晩は旨い鮨で乾杯というわけだ。鮨屋には7時に予約を入れてはいたが、到着したのは、20分ほども回っていたか。ま…

夏の味わい 立原

「え、おまえ、驕ってくれるの?じゃ、立原さん、電話してみよっか」 と、連れは間髪入れずに立原に予約。約束の7時、連れはすでにカウンターに陣取り、ビールを美味そうに飲んでいる。横に並んで相伴すると、一気に蒸し暑さから開放された。口取りは夏野菜…

朝飯

炊きたての飯、葱と豆腐の味噌汁。味噌汁は出汁を丁寧にとり、昨年2月に仕込んだ、文字通り、寒仕込みの手前味噌で仕上げる。これが何より美味い。菜は自然薯のとろろ汁。これに、豚ロースの生姜焼きとオクラと梅干のたたきを添えた。自然薯と生姜焼きとの相…

青森産イタヤ貝 絵唐津向付

青森産イタヤ貝を丸赤にて求める。本日は貝柱を刺身に、ヒモを酢味噌和えにこしらえた。酢味噌は、白味噌8、赤だし2の割合で、酒、砂糖とともに火にかけ、濃厚に練り上げる。我ながら、良い出来だ。季節はずれではあるが香りのある春菊をヒモと和え、この…

オモニの店

久しぶりに韓国家庭料理の店を覗く。15年、この店を一人で切り盛りをしているオモニに「本当にィ、久しぶりネェ!」と笑顔で迎えられた。彼女は目がきりっとしたなかなかの韓国美人である。生ビールとキムチで乾杯。昨今、挨拶代わりの話題は新型インフルエ…

美味いもの

「ぬたが食べたい、ぬたが食べたい。この季節、ぬたがなくては始まらないんだ」 「はいはい、さようで。それでは、丸赤を覗いてまいりましょう」逸品が並んだ丸赤の店頭で、つやつやと美しい青柳舌切に目をとめた。「その青柳をくださいな」 すると丸赤の目…

季の移り

桜も三分咲きの頃、母の体調が優れないとの一報に帰郷した。3ヶ月ぶりに見る母の身体は、ひと回りも小さくなったように感じたものだ。その折は大事にいたらず安心したが、新緑の萌える4月末、再び急を告げる電話がなった。今度は父が救急で運ばれ、入院した…

鎌倉・箱根を旅する

夕刻、鎌倉の料理屋「まき」ののれんをくぐる。連れは、茶懐石にも明るいこの店の主人とは馴染みで、前々から私を連れて行きたいと言っていたのだった。入れ替わりに一組の男女が帰ると、店内に客の姿はなかった。雨脚が強いためか、その後の客入りもなく、…

鯛の白子

銀座あさみにて会食。近日に思いついての予約はなかなか取れず、この店に行くのは久しぶりだったが、茶懐石をも踏まえた主人の真面目な仕事振りは変わらずだ。本日は味にうるさい数寄者と茶道具商との会食であり、出される料理について二人の評価を聞いてい…