「え、おまえ、驕ってくれるの?じゃ、立原さん、電話してみよっか」 と、連れは間髪入れずに立原に予約。
約束の7時、連れはすでにカウンターに陣取り、ビールを美味そうに飲んでいる。横に並んで相伴すると、一気に蒸し暑さから開放された。
口取りは夏野菜のひたし。思わず連れは「潮さん、美味い!」と声を出した。そして「このツユで、とびっきり上等のそうめんを食べたら、こりゃたまらないなア〜」と、彼の目は一点宙を見つめる。潮氏、厨房と店内を分ける暖簾から顔を出し、ニンマリと微笑んだものだ。
さて、向うはマコガレイ、刺身と昆布〆に調理されている。「…ときたかアー、ならば、日本酒だネェ」 いつものように、連れは大きなかばんからガサコソと古唐津と黄瀬戸六角の盃を持ち出した。傍らで窺っていた潮氏、きたな、っとばかり、黙って両酒盃を自ら手にし、確かめるように清め、我々の面前にキチリと差し出す。まさに、あうんの呼吸といったところか。そして、酒はきまって、三千盛、勿論、だだを捏ねて冷酒を所望だ。
焼物は待望の鮎。先だってまで「鮎、でないかなあ〜」っと言っていた連れの想いが、正夢になったか。岐阜県産の稚鮎で、開いて2時間ほど干したものだそうだ。
備前の皿の上に並んだ2尾の鮎は、小さいながら、精悍な「鮎」の顔をしている。ひと口食むと、清流の爽やかさが口中に広がっていった。
献立