古美術

謹賀新年

鎌倉にて 1月3日、本年も鎌倉にお住まいの数寄者 御贔屓の古美術店にて懐石、薄茶一服のお相伴に預かる。 懐石をいただく度に思うことは、プロ、アマチュアに関わらず、調理する方の好みや美意識は如実に器の上に現れるということだ。私とは異なる、例えば…

喜三郎の小吸物椀

鎌倉にて 例年、新年3日に懐石を担わせていただく鎌倉の数寄者の茶事はコロナ禍で中止だという。だが古美術商の茶事に相伴させていただくことになった。 1月3日、シャンパンを抱えて、数寄者とともに4時半に先方に到着。まずは新年のあいさつを交わし本席…

新年を祝うⅡ

鎌倉にて 例年、松の内に茶事を行う鎌倉の数寄者から、今年は客の都合がつかず見送りとなったと連絡が入った。izaatsuyoshi.hatenablog.com当方の水屋仕事はないが、例年茶事の後に伺う古美術店に行こうと誘いを受けた。ありがたいことである。三日午後四時…

鯛のコブ〆

拙宅にて 天然の鯛が手に入り、久しぶりに志野と絵唐津の向こうを持ち出す。「古志野向附」は荒川豊蔵の箱書があり、蓋裏には「美濃古窯大萱にて 桃山時代にやかれし物なり」とある。時代燗鍋に並ぶは立原潮氏の盃。立原氏は作陶や書を手掛けられておられた…

今年もいせ源

神田須田町 いせ源にて 鮟鱇鍋の名店、いせ源に向かう。外食は久しぶりである。例年、店の前には列が出来る人気の店だが、前日に電話で混み具合を尋ねると「このご時勢ですから、すぐにお入りになれますよ!」と男の声が帰ってきた。さて、玄関に設置されて…

もうひとつの江戸絵画 大津絵

東京ステーションギャラリーにて 10月24日、朝10時の開館を待って、東京ステーションギャラリーに飛び込む。「もうひとつの江戸絵画 大津絵」は、所蔵歴に焦点を当て構成されたもの。それ故、惹句は「欲しい! 欲しい! 欲しい!」。江戸期においては安価な土産…

茶名披露の茶事

実家にて:2002(平成14)年11月10日 実家において私が亭主となり茶事をしたのは計3回、過去の記録を紐解けば、2002年11月10日、2003年11月24日、2005年10月17日であった。 2002年の折は茶名披露の茶事で、社中の先輩I氏とともに亭主を務めた。このI氏、少々…

大津絵 ヒョウタンナマズ

鳥海青児の大津絵 鳥海青児という洋画家をご存知だろうか。1902(明治35)年、神奈川県平塚生まれ、本名は正夫という。15歳の頃、小遣いで油絵具を買って絵を描き始めた。1921(大正10)年、関西大学に入学、翌年、当時流行した姓名判断に従って青児と名乗っ…

初炭手前

拙宅にて 初炭手前の稽古をする。仕事を終え20時頃に稽古に駆け込む私は、炭手前の稽古に間に合うことは稀であった。そうであっても、師が繰り返した「炭おくはたとひ習ひに背くとも湯のよくたぎる炭は炭なり」という利休百首は耳に残っている。胴炭をうまく…

続き薄茶

拙宅にて 今朝も続き薄茶の稽古をする。紅葉の頃、師や社中の友を東京から2時間ほどの実家に招き、茶名披露をしたことが懐かしく思い出される。 この折は、同時に茶名をいただいた道具好きの先輩とともに二人亭主となった。彼は初炭と濃茶を、私が懐石と薄茶…

盆略点前

拙宅にて テレワークは時間の割り振りが自由である一方、共通認識が甘かったり、仕事の進捗にズレがあったりと、大なり小なりストレスが発生する。そんな時は無心で茶の稽古をする。これが私の一番のストレス解消法であるようだ。毎週、稽古に通っていた頃は…

高麗茶碗展

12月1日、三井記念美術館にて「高麗茶碗展」を見る。最終日で展示ケースの前には人々が列を成していた。 見応えがあった。たまに茶の湯の世界にどっぷりと浸かるのもいい。美術館を出て、コレド室町で中国茶を飲む。小さな菓子が添えられてくる。品がよく、…

山上の茶事(九)

新春の献立 1月5日、鎌倉の数寄者、居合仲間を招いて新春恒例の茶事、本年も水屋に侍る。懐石のスタートは11時、客は10名、亭主、水屋方を含め総勢12名である。献立 向う(鯛昆布〆・干柿の柚子巻・千切大根大葉) 焼物(松風焼き) 強肴(酢蛸・酢蓮) 煮…

山上の茶事(八)

新春の献立 1月3日、鎌倉の数寄者、居合仲間を招いて新春恒例の茶事、本年も水屋に侍ることとなった。7時半に約8キロの料理と食材を抱えて家を出、2時間後、数寄者宅は山上の茶室へと到着した。懐石のスタートは11時20分、客は13名、亭主、水屋方を含め総勢…

庭を見る

連れの所要に便乗し、猛暑のなか京都に出かける。「白沙村荘 橋本関雪記念館」を初めて訪れる。ここは京都画壇の一時代を築いた画家、橋本関雪の理想郷である。関雪は終生、作庭を楽しみ、また古美術を愛し収集した。東山大文字を借景にした庭園には、平安か…

ゴルフクラブと大島紬

4月29日朝、信濃大町まで直通の7時30分発のあずさに乗るか、それとも松本止まりで乗り換えをしなければならぬひとつ前の臨時特急に乗るか、いつものように指定券を購入しない連れと私は、新宿駅のホームで選択の自由を満喫していた。「雪に覆われた北アルプ…

山上の茶事(七)

福とは? 1月3日、鎌倉の数寄者、居合仲間を招いての新春恒例の茶事、本年も水屋に侍ることとなった。客は11名、亭主、水屋方を含め総勢14名である。昨年の料理不足の轍を踏まぬよう、7キロにもなる料理を携えたものだが、この度は客からも沢山の料理が持ち…

いせ源

毎冬、12月と2月に足を運ぶ「いせ源」にて、師走21日、あんこうに舌鼓を打った。本日、連れは斑唐津と高麗青磁の盃を携えてきた。まずは肝刺しに煮こごり、唐揚を前に一献。のらりくらり盃を重ねていると「そろそろお鍋に火をおつけしましょう!」と仲居から…

懐石リハビリ

「おまえ、料理が下手になったなあ!」と連れがしみじみと言う。何をか言わんやその通り、このところ簡単なオードブルでお茶を濁し、メインは見た目の派手なオーブン料理となれば、当方とても自覚症状大アリである。そこで、懐石への情熱を呼び戻すべくリハ…

続・一客一亭の茶事

蔵の中で眠り続けていた古信楽の種壷を花入れとし、連れを正客に迎えて一客一亭の茶事を開く。しかしこの壷のおおらかさを前に、花がなかなか定まらない。落としを代えてみたり、開いた椿をいくつか入れてみたりして、ようやく自然な形に落ち着いた。席入り…

一客一亭の茶事

茶の湯の稽古を辞してから10年余りが経った。今や、和服の着付けは多分に時間がかかり、正座をすれば足がしびれ、点前となれば足がふらつく・・・ここに至っては、自覚も新たに自主錬を開始。何故ならやがて訪れる老後の楽しみのひとつは茶事であるのだから…

山上の茶事(六)

転んで福? 鎌倉の数寄者、居合仲間を招いての新春恒例の茶事、本年も水屋に侍ることとなった。客は10名以内と聞いていたが、それを超えての大人数となり、各々が持参した大量のアルコールが水屋の一隅を飾った。一方、昨年は出しきれないほどあった客の持ち…

琳派100年記念 箱根で琳派 大公開

このところ温泉から遠ざかっていた当方、8時30分新宿発のロマンスカーに乗り込み、連れとともに一路、箱根を目指した。今回の箱根行きは何かと話題の岡田美術館を観るためでもある。岡田美術館は、長く所在が不明であった喜多川歌麿の肉筆画発見のニュースと…

広島 太田川の鮎

鮎を楽しみにろばたに出かけた。一昨日の昼、Y氏に同道して銀座・吉野で鮎を食したことを連れに話すと、こちらの言葉が終わらないうちに「その鮎恐い顔してたか? 養殖だろ!」と返ってきた。「天然の鮎は勇ましくて恐い顔をしている」とは連れの持論だが、…

『雨柳堂夢咄』 波津彬子 文庫版1-8巻(ソノラマコミック文庫)

茶友推薦のコミック。20年にわたり書き続けられているという骨董にまつわる奇譚集である。確かに何かが棲んでいるような茶碗には幾度か出会ったことがある。茶を啜ればこちらが茶碗の中に吸い込まれそうな・・・雨柳堂夢咄 文庫版 コミック 1-8巻セット (ソ…

山上の茶事(四)

鎌倉は山上に茶室を構える某数寄者の恒例の茶事、毎年初冬から春にかけて開かれるが、今年は諸事情から2ヶ月以上も早い9月21日に行うこととなった。懐石を依頼された当方は、近年9月に手がけた記憶がなく、一週間前から食材売り場を見て歩き、献立を決めたの…

利休にたずねよ

話題の映画「利休にたずねよ」を観る。レビューの評価は芳しいものではない。三千家が協力に名を揃え、名腕を実際に使い、破格のキャスティング、原作は直木賞受賞作である。制作側は、こんなにも評価が低いとは思わなかったのではないだろうか。茶の湯を知…

井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ

井戸茶碗70余点が並ぶ空前絶後の展覧会、最終日の本日、混雑を避けて開館時間の10分前に並んだものだ。会期半ばに展示変えがあり、本日は2回目、連れに至っては3度目の訪問である。今回は後期出品の小井戸「老僧」が目当て。小井戸ながら、大井戸に負けない…

雪積もる 箱根美術館

早朝から料理の腕をふるい、鎌倉彫の重箱にあれやこれやと詰め込む。弁当を携え、残雪の箱根に向かうことにしたのだ。良い天気である。 ロマンスカーに乗りこむと、連れはビールを片手に、早速重箱の蓋を開けた。飯は、言わずもがなの連れの好物、牡蠣の炊き…

よみがえる記憶〈大師会〉

朝から降り続ける雪。新成人たちにはあいにくの天候となった。ニュースの映像では、この日のために選んだ華やかな振袖に、冷たい雪が降りかかっている。 その光景に、ある日の出来事が思い出された。10年以上も前になるだろうか。茶の湯の恩師の計らいで根津…