茶の湯の稽古を辞してから10年余りが経った。
今や、和服の着付けは多分に時間がかかり、正座をすれば足がしびれ、点前となれば足がふらつく・・・ここに至っては、自覚も新たに自主錬を開始。何故ならやがて訪れる老後の楽しみのひとつは茶事であるのだから。
まずは連れを正客に一客一亭の茶事を敢行する。席入りは11時半。
早朝から料理、道具の清め、掃除に追われた。そうこうするうちに、茶事に熱をあげていたかつての記憶が蘇ってくる。
寄り付きには、掛物の代わりに連れが描いた戯画を用意、また白湯の代わりに連れの好物のスパークリングワインのハーフボトルを添えた。良い気分で絵の余白に一句を書き入れてもらう、つまりは自画賛を所望というわけである。一客一亭の茶事ならではの趣向と言えようか。
さて出来上がりを覗いてみるや、ゴルフに精を出す自分を描いた絵の横に「この世にはこれほど難きものはなし」の文字、この日の当方の心境にも通じて、妙である。
以降、点前は覚束なくとも、長年仕舞い込んであった道具は懐かしく、相伴をしながら常ならぬ会話を楽しんだ。
本席
- 床 大徳寺394世大休宗活筆 那箇是知音
- 花 入 呉須染付 明末
懐石
- 向 う(鼠志野 桃山時代)鯛昆布〆、ラディッシュ、山葵
- 石 盃(黄瀬戸六角 桃山時代、青磁象嵌平盃)
- 飯 椀(真塗)一文字飯
- 汁 椀(真塗)豆腐、浅利、溶き辛子
- 煮物椀(不老萬年蒔絵黒煮物椀) 海老真蒸、青菜、人参、柚子
- 焼 物(黄瀬戸菊絵平皿 桃山時代)鰆西京焼、焼葱
- 進 肴(福禄鉢 永楽即善造)蒟蒻、青菜、人参の三杯酢和え
- 小吸物椀(柿合朱塗竹絵)すっぽんスープ(舞坂製)針生姜
- 八 寸(古染付漢詩文皿 明時代) 烏賊黄金焼 青菜胡麻和え
- 香物鉢(山茶碗 平安時代)柚子大根漬
- 菓 子 爾比久良(にいくら:大吾製 新座市)
濃茶
薄茶
さて、当日は10時前に和服に着替えた。紺地の大島紬に朱色を基調とした抽象紋様の名古屋帯を締め、再びエプロンに袖を通した。和服を着るととたんに動きが緩慢となり、洋服の機能性を改めて感じたものである。