2008-01-01から1年間の記事一覧

年の瀬の茶

正月の取り合わせをあれこれと考えながら茶道具の整理をしていると、煎茶点前の道具が目についた。今は亡き大伯母の愛用品である。当方、煎茶道には不案内であるが、小さな、まことに愛らしい茶銚や茶碗に興味をひかれ、初心者用の本を紐解いてみた。使いや…

12月に思う

毎年のことながら、12月の日々は矢のように去っていく。私事、家族の誕生日を祝い、世間並みにクリスマス、忘年会と慌しく日を送り、また年賀状を書いて時を過ごした。この月を師走とはよくも名づけたものだ。今週初め、遠方に住む友人Kより誕生日祝いが届…

灰色の空

8時52分のMAXとき311号で東京駅を発つ。高岡付近では、車窓より妙義の奇怪な姿を遠望し、消化不良に終わったこの秋の山行を思い出した。2時間ほどで長岡に到着する。山本五十六を排出した長岡は、戦災で町の大半を焼失した。市街地に戦災記念館があるのも…

冬の定番

しんしんと冷え込む夜は、母のシチューを思い出す。ミルクと野菜がたっぷりと入った熱々のシチューだ。我が家の冬の定番メニューであり、忘れられない味である。今や、子どもたちは独立して、実家を離れた。和食好きの父と二人暮らす母は、この冬もシチュー…

誕生日を祝うⅡ

近しい人に、なんと冬生まれが多いのだろう。家族は皆、12月と1月の生まれである。不肖、誕生日を迎え、知人からボルドーのワインが届いた。それではと、本日は仏料理と洒落込んだ。「前菜はホタテ貝柱のマリネー仕立て、貝柱は軽くソテーしております…続い…

誕生日を祝う

旬菜料理「立原」で、Mの誕生日を祝う。厨房とフロアを慌しく行き来する店主の立原氏も足をとめ、乾杯となった。盃は、このところお気に入りの黄瀬戸六角、刷毛目、斑唐津である。今年還暦を迎えたという立原氏は、著名な小説家であった父の歳をいくつも越…

"La petite madone"

4号以下の絵が華やかに壁を飾る日動画廊の「ミニヨン展」。ミキモトのクリスマス・ツリーと同様、師走の銀座を彩る風物詩である。今年で47回目、ミキモトのツリー(1976〜)より歴史があるというわけだ。若手から物故大家まで多彩な絵の陳列は、日動方式と呼…

青森産天然平目

丸赤で、青森産の平目とスルメ烏賊を求めた。 (12/6)さてこの日の宴、序盤にサッポロラガー、エビスと2本の中瓶を空け、続いて広島は賀茂鶴へと攻め入った。平目は昆布〆にはせず、山葵、醤油で食したが、一人の酒呑みが語るには、 「この平目はしまりがな…

12月を前に

明日から12月、今年も残すところひと月となった。我が家の小さなツリーの飾りつけをする。昨日、秋田牛のステーキ肉を店で勧められ、購入した。自宅でステーキを焼くことは年に一度あるだろうか。シンプルな料理であるからこそ、焼き加減が重要だ。ミディア…

魯山人黄瀬戸角向付

牡蠣の美味い季節である。本日はかき尽くしの宴と相成った。牡蠣鍋に、まずはエビスの瓶ビール。ぷっくりとした熱々の牡蠣に、キリッと冷たいビールが美味い。北大路魯山人の黄瀬戸角向付。海鼠釉がでろりとかかり見どころの多い器である。茶懐石向うに、肴…

古袱紗の記憶

小さな裂地を愛でるのも、なかなか楽しいものである。織や柄、手触りなど、それぞれに良さがある。先日、某大学の茶道部から、お運びに使う古袱紗を複数枚借用したいとの申し入れを受けた。地味好みの当方の手元にあるものでは、女子学生にはつまらないだろ…

藤田嗣治 作品をひらく

藤田嗣治の歿後40年を迎え、各地で藤田関連の展覧会が開催されている昨今、林洋子氏著 『藤田嗣治 作品をひらく 旅・手仕事・日本』(名古屋大学出版会)のサントリー学芸賞受賞が報じられた(11/14)。藤田嗣治、この時代に翻弄された画家は、82年の生涯に膨…

鎌倉古武道大会

鎌倉、鶴岡八幡宮で古武道大会が行われた。かねて知人に誘われており、昼前に研修道場に入った。袴姿の武人たちが居並び、熱気が伝わってくる。会場では、合気道の技が披露されていた。めまぐるしい技に受身の人間が次々と倒れていく。不思議なものであった…

一夜明けて

碓井の川辺をつたい詩碑公園を抜けると「盆栽展」の看板を目にした(10/13)。この3連休の間、開催されていたようである。入り口付近の即売会では、盆栽好きが集い、楽しそうに談じ合っている。連れは「御用松」の盆栽に惹かれた様子であったが、大きすぎて…

妙義山

群馬県の名峰、妙義山を歩く(10/12)。坂本繁二郎とともに訪れた青木繁が、この山でのスケッチを残しており、以前から興味があった。現地に一歩足を踏み入れれば、妙義山神社を入り口とする修験の地であり、信仰の気を深く感じさせる。奇岩をめぐるハイキン…

フジタとフレンチ・レストラン

茨城県笠間市の笠間日動美術館で「フジタとモンパルナスの仲間たち」(〜11/30)が開催中である。本日(10/4)は午後2時より、昭和美術史に詳しい美術評論家瀧悌三氏をはさんで、美術館館長、副館長との鼎談会があるとのこと。藤田嗣治をめぐる美術界について…

手打そば くりはら

1年半も前になろうか、知人が渋沢に蕎麦屋を開店した。箱根の湯の帰りに立ち寄ろうか、いやいや、丹沢に登りその帰りに食そうか、とかねて計画をしていたが、今日(9/28)まで時は矢のように過ぎてしまっていた。店は渋沢からタクシーで5分ほどのところにあ…

トマト

このところの暑さに一晩冷房を入れたままにし、不覚にも夏風邪をひいてしまった。昨夜から高熱をだし、昼までこんこんと眠る。トマトの差し入れ。くし型に切り、塩を振ってくれた。冷たいトマトが喉に気持ちよい。お陰で熱も下がってきた。ありがとう。

三島鉢「鯛塩焼き」

夏の終わりに、美味いそうめんが食べたいとの声に、週末恒例の酒宴を設けた。前日に丸赤をのぞき、鯛を求める。一塩したその切り身を焼き、酢橘をしぼる。素晴らしい素材が手に入った場合は、シンプルな調理法に勝るものはない。鉢形の器に盛り付けてみる。…

登山靴一考

7月の八ヶ岳で、登山靴の底が剥がれるアクシデントに遭遇した。その後の山行で、白馬槍、五竜の小屋の入り口に右のポスターが掲示されていることに気づいた。ポスター記載の説明によれば、登山靴の寿命は約5年、温湿度等の保存状態によっては、それに満た…

草木ノート

宇都宮貞子著『草木ノート』1970年 読売新聞社松本市内の古書店、慶林堂にて母の土産に求む。宇都宮は1908年、長野に生まれ、植物に関するエッセイを数多く著している。長年にわたって、草木にまつわる文を綴っている母は、興味をもって読んでくれると思…

夕顔咲く

夕刻に甘い香りをはなちながら、大きな白い花を開く。一本の夕顔が、一夜に十を越える花をつけることもあり、その数を数えることは、夏の夜の楽しみのひとつでもある。しかし、見事に開花していた花弁のしぼみ、うなだれた翌朝の姿を見るにつけ、花の命の短…

不帰の嶮

8月9日、猿倉から白馬槍温泉へのルートを往く。山道が崩壊したのだろう、大幅にルートが変更されていた。新しく切り拓かれた道は、かつて生い茂っていた草木が踏みしだかれ、青々しい草いきれが足元から立ちのぼってくる。じりじりと焼けつくような陽射しの…

帽子、靴を買う

帽子と登山靴を新調する。ものは大切に、出来るだけ長く使いたいと常日頃から思っているが、失うときは突然にやってくるものだ(7/20「八ヶ岳」参照)。一代目の靴はKAYLAND MERCURIO。本皮で重量感のあるものだった。一足ごとにガツッ、ガツッという重々し…

ムーンライト信州

先日まで満席で予約の取れなかった、ムーンライト信州の席が確保出来た。登山客になじみ深いこの列車は、深夜に新宿を出、明朝5時過ぎに白馬に到着する。椅子に座って一夜を過ごす。寝心地は悪いが、車中の睡眠時間があくる日の体調を左右する。何が何でも…

蓑虫や

「みのむしやなかなか こえのおもしろし」先日来時折、石川丈山の句が頭をよぎる。この句に接するとき、心晴れやかであるのか、悩みを抱えているのか…。人それぞれ思い浮かべる鳴かぬ虫の声には、ひとつとして同じものはなかろう。下記にリンクする実に興味…

蓑虫や 酒宴にて

蓑 虫 也 中 々 声 能 面 白 支江戸初期の隠遁者、石川丈山の句である。家康の諜報者といわれるが、数寄者としても名を成した人物だ。 「みのむしやなかなかこえのおもしろし」 何を想ってこの句を詠んだか…いずれにしろ丈山の当時の心境を伝えるものではあ…

八ヶ岳 煌々たる満月

7月19日、八ヶ岳に向かう。新宿7時発のスーパーあずさに乗ろうと家を出たが、さすがに3連休の初日、発車20分前のホームには、すでに長い列が出来ていた。そこで続く18分発のあずさに乗車、10時前に茅野に到着した。茅野からバスに1時間ほど揺ら…

朝茶事

多忙にまぎれ、このところ茶事から遠ざかっているが、こうも暑い日が続くと、午前5時のひんやりとした空気の中で始められる朝茶事が恋しくなる。仮想の朝茶事でも記してみようか。蜩が鳴きはじめる午前4時のうすもやの中、亭主は路地に打ち水をする。徹夜…

絵唐津向付「赤烏賊」

湯通しをした小振りの赤烏賊、その甘く柔らかい身に、少量の山葵を乗せて食す。桃山期の絵唐津に盛り付けてみた。往時、美濃の織部や志野、黄瀬戸、そして遠く唐津でも、画期的な意匠の懐石の器が盛んに作られている。特に絵唐津は人気を博した。この器から…