灰色の空

izaatsuyoshi2008-12-23


8時52分のMAXとき311号で東京駅を発つ。高岡付近では、車窓より妙義の奇怪な姿を遠望し、消化不良に終わったこの秋の山行を思い出した。

2時間ほどで長岡に到着する。山本五十六を排出した長岡は、戦災で町の大半を焼失した。市街地に戦災記念館があるのも、この町の特長であろう。

司馬遼太郎歴史小説『峠』の主人公、河井継之助の記念館を訪れる。屋敷跡に建つこの記念館の庭の一隅には、蹲や灯篭が残り、わずかながらも往時を偲ばせる。蒼龍窟という継之助の号は、今は失われた松の姿から付けられたそうだ。なかなか洒落た号だと思う。

冷たい雨がぱらつきだした午後2時過ぎ、仕事を終えた連れと合流し、市郊外の温泉へとへ向かった。タクシーの窓から、灰色の雲に蔽われた空を眺める。冬の間、新潟ではこのどんよりとした空が続くのだと、初老のドライバーが語る。

露天の湯船に雨。立ち上った湯気が次々と烈風にさらわれていく。この不思議な光景に心が奪われ、しばし呆然と眺める。湯はナトリウム、カルシウムを含む塩化物泉で、冷えた身体を芯から温めてくれた。

雨脚が強くなり出した頃、帰路につく。車窓を激しく叩く雨が、河井継之助の波乱の生涯を思わせた。

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