美術

諏訪敦 眼窩裏の火事

府中市美術館にて 会期(2022年12月17日‐2月26日)も残すところ1週間となり、2月19日日曜午前、「諏訪敦 眼窩裏の火事」に飛び込む。 ヨーロッパの名画が並ぶ招来展のような混雑はないが、会場を見渡せば来館者は20代から中高年までと年齢層も幅広く、客足は…

生誕140年 二つの旅 青木繁×坂本繁二郎

アーティゾン美術館にて 福岡県久留米市に生まれた同い年の画家、青木繁と坂本繁二郎の生誕140年を記念する展覧会。 www.artizon.museum 「海の幸」や「わだつみのいろこの宮」などの傑作を残し、肺結核を患い28歳で逝った青木繁。坂本繁二郎はその没後、遺…

ザクロをいける

実家にて 水盤にザクロと田舎ギクをいける。 この青磁の水盤は48cmほどありこれまで使ったことがなかったが、実が重く枝がしなって置くことしか出来ないザクロにはこの器しか見当たらない。 華道をたしなんだことのない私の花は、茶の湯の「花は野にあるよう…

生誕110年 香月泰男展

練馬区立美術館にて 「香月泰男展」の最終日(3月27日)が近づき、ようよう重い腰をあげた。混雑を嫌い開館を待って入館する。一番乗りは初めてであったか。連れはこの3月のアートフェア東京で、香月のある作品に興味を持ったが、購入するまでには至らなかっ…

9月の花 Ⅱ

拙宅にて 先週末に実家から持ち帰った秋の花々。ホトトギスは花弁をほろほろと落とし、大根草も黄色く小さな花弁を散らせた。いくつかの花を加えていけ直す。5月に移り住んだこの家は、ドアや窓枠などアメリカのアンティークの建具が使われており、洋花がよ…

夏目漱石『三四郎』

読書の時間 4月半ばに、そしてそのひと月後に再度の引越しをした。何と慌ただしい春であったろう。引越しを前に、予て処分を考えていた100冊余りの書籍を手放した。それでも1度目の引っ越しの際、大型の美術本や図録を詰めた大量のダンボール箱に辟易する作…

コレクター福富太郎の眼 昭和のキャバレー王が愛した絵画

東京ステーションギャラリーにて 緊急事態宣言により休館を余儀なくされていた東京都の美術館。休館明けの6月初旬、東京ステーションギャラリーで開催されている話題の展覧会「昭和のキャバレー王が愛した絵画」に足を運んだ。何とも艶っぽい美人画を中心に…

ボッティチェッリ「聖母子(書物の聖母)」

拙宅にてコロナ禍に悩まされ続けた1年であったが、我が家の小さなクリスマスは例年通り、本棚の上にやってきた。 ボッティチェッリの「聖母子(書物の聖母)」とダ・ヴィンチの「聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ」、どちらの絵葉書を飾るかが毎年の思案どころ…

グザヴィエ・メルリ「秋」

拙宅にて 落葉の頃、必ず飾る絵葉書がある。ベルギー象徴派の画家、グザヴィエ・メルリの「秋」。メルリは1845年、ブリュッセル郊外ラーケン生まれ。ブリュッセル美術アカデミーに学び、1870年、ローマ賞を受賞した。1892年、ファブリ、デルヴィルとともにグ…

モネとマティス もうひとつの楽園

箱根 ポーラ美術館にて4連休を何処で過ごそうか、連れと実りのない会話を繰り返した昨今。詰まるところ足を向けたのは、いつものごとく箱根であった。連れはゴルフに2日を費やし、そろそろ違うこともしたかったであろう。ポーラ美術館で開催の「モネとマティ…

鳥海青児という画家

鳥海青児という画家に興味があればこの本がオススメ。471ページの力作、価格はお高め、図書館利用がオススメ。大いなる奇人ぶりが楽しめます。鳥海青児絵を耕す作者:原田 光メディア: 単行本

大津絵 ヒョウタンナマズ

鳥海青児の大津絵 鳥海青児という洋画家をご存知だろうか。1902(明治35)年、神奈川県平塚生まれ、本名は正夫という。15歳の頃、小遣いで油絵具を買って絵を描き始めた。1921(大正10)年、関西大学に入学、翌年、当時流行した姓名判断に従って青児と名乗っ…

早春の椿

弥生1日、実家から小さな包み(ゆうパック)が送られてきた。先日、電話で、東京ではマスクもアルコール消毒液も店になく買うことができないと話したのを、母は案じてくれたのであろう。箱を開けると、それらウイルス対策用品の上にふわりと花が置かれていた…

正月飾り

昨日伺った数奇者の正月飾りは、雄々しいものであった。毎年、花材で変わる我が家の飾り付けも、来年の参考のため記録しておくことにしよう。 実家玄関 実家床飾り 東京自宅

東山魁夷展

縁あってこれまで美術館に見に行くほどの興味を持たなかった「東山魁夷展」を訪ねることになった。巧みな構図、達者な筆使いなど感嘆させられること多々あるが、何よりも画家の清澄な心を感じさせる。これこそ東山芸術の最大の魅力と言えようか。

はとこ会

三連休の最終日、画家の道を歩み始めたはとこを招いて食事会を開いた。はとこの中では一番年下で歳も離れている彼女とは、これまで余り会う機会がなかった。今回は、人見知りの彼女のため話上手の妹が同席し、和やかな時間をともに過ごすことなった。繊細な…

画鬼暁斎 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル

三菱一号館美術館にて連れと待ち合わせ「画鬼暁斎」を見る。本日は渦巻文の藍の単衣に唐草紋様の半幅帯、白足袋に下駄を合わせて、いざ暁斎の世界へ。ジョサイア・コンドル(1852-1920)が三菱一号館を設計したことから企画された今展では、コンドルが師事し…

私の印象派 ワシントン・ナショナルギャラリー展〜アメリカ合衆国が誇る印象派コレクションから 2015.2/7-5/24

西欧の美術館は寄贈作品で成り立ったものが少なくない。例えば、ピカソの遺族は莫大な相続税をピカソの作品で納めたが、これをフランスは大いに歓迎した。ピカソの傑作は永久に国内にとどまり、設立した美術館には多くの人々が訪れる。これは即ち外貨獲得の…

ジョルジュ・デ・キリコ 変遷と回帰 2014.10/25-12/26

パナソニック汐留ミュージアムは小規模会場ながら、大画家の招来展を開催する美術館である。今回は形而上絵画の巨匠デ・キリコ展。 何度かテレビでも紹介されたこともあり、終了日も迫るとあれば入場制限を行うほどの人気ぶりである。連れが言うには「すごい…

チューリヒ美術館展 印象派からシュルレアリスムまで 2014.9/25-12/15

テレビ朝日系列で大々的に宣伝をしている「チューリヒ美術館展」。出品作の大半は、極めて日本人好みの画家の作品であり、この手の展覧会では変わり映えのしないラインナップ。見送ろうと思っていたが・・・先日見た「ホドラー展」で、セガンティーニの名前…

フェルディナント・ホドラー展

「躍動する生命のリズム―スイスが誇る異才、40年ぶりの大回顧展」このコピー通り、これほど多くのフェルディナント・ホドラーの作品を見たことはない。貧しい家庭に生まれ肉親を早くに失い、前半期の作品には「死」や「憂鬱」のイメージがつきまとう。しかし…

ヴァロットン― 冷たい炎の画家

9月19日「ヴァロットン― 冷たい炎の画家」展に出かける。これまで意識することのなかった画家だが、この機会にじっくりと見てみたい。人生をシニカルな目で捉えた作品は笑いを誘うが、一方、画家の心の奥底に潜んでいる非情にグッと来るものがある。傲慢、物…

梅とバルテュス

気掛かりな仕事から解放され、2ヶ月ぶりに晴れ晴れとした心持で迎えた土曜日。早朝4時半に脚立を抱えて庭に出た。さて、黄色く色づいた梅の実を収穫するとしよう。 まずは肩から袋を袈裟にかけ、脚立に登る。そして手の届く限りの実へと腕を伸ばす…お次は脚…

「光の賛歌 印象派展 パリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅」

東京富士美術館を訪れるのは、はじめてである。八王子駅からはバスで10分余りとのことだが「印象派展」の最終日のためであろうか、乗り場には長い長い列が出来ていた。待つことが苦手な連れは、すぐさまタクシーを拾った。郊外をしばし走ると、丘の上に大き…

モローとルオー 聖なるものの継承と変容

学生時代からギュスターヴ・モローは好きな画家のひとりであった。モローは自らのアトリエを美術館として後世に託した。初めてのパリで、この美術館を訪ねた際は、モローがここで暮らしていたのかと感慨を深くしたものであった。今展は、モローと師弟関係に…

「福本章 二都物語 プロヴァンスからヴェネツィアまで」

イタリア文化会館にて「福本章 二都物語 ヴェネツィアの光展」(5月24日-6月22日)が開催中である。福本章は1932年岡山に生まれ、芸大では林武教室に学んだ。1967年画家の登竜門「昭和会展」で昭和会賞を受賞し、同年ヨーロッパに渡っている。以降、フランス…

レオナール・フジタとパリ 1913-1931

ゴールデンウィークは最終日を迎え、人々は日常へと帰り支度を始めている。5月6日、Uターンラッシュをよそに、静岡に向かった。静岡市美術館で「藤田嗣冶渡仏100年記念 レオナール・フジタとパリ」を鑑賞する。1913年、新妻を日本に残しフランスへと旅立っ…

奇跡のクラーク・コレクション ルノワールとフランス絵画の傑作

三菱一号館美術館で、印象派の殿堂『奇跡のクラーク・コレクション』を見る。珠玉の作品を見るため朝から多くの人が詰めかけており、人気のほどがうかがえた。年配の男女の姿が多く見られたが、この偉大なコレクションに彼等の関心が向くことは容易に理解出…

カミーユ・クローデル

本日の日曜美術館アートシーンは、〈世界美術館紀行〉ロダン美術館の放映であった。オーギュスト・ロダンを語る時、彼の弟子であり愛人、そしてミューズであった1人の女性芸術家の存在を切り離すことは出来ない。カミーユ・クローデル、ロダンと出会い才能を…

佐竹徳(1897-1998)という画家

厚く雲が垂れ込めた早朝、東京駅から新幹線に乗り込み岡山を目指した。岡山県瀬戸内市内、小豆島を望む風光明媚な牛窓町は、洋画家佐竹徳が40年にわたり過ごした土地である。彼は最晩年、牛窓町に多くの作品を寄贈(現・瀬戸内市立美術館所蔵)した。瀬戸内市…