映画

ベニスに死す

深夜、目が覚めてしまった。もう眠れまいとテレビをつけると、とある映画の冒頭の一場面が流れていた。大学時代、趣味を同じくする友人と名画座へ通った。名匠ヴィスコンティの特集をはじめ、私たちを満足させてくれる監督たちの映画を見たものだった。懐か…

「海辺の家」(2001年 アメリカ)

深夜にパソコンを開き、タイトルに惹かれ映画を見る。海辺の風景が美しい・・・眠れない一夜には最適な1本。建築事務所に勤める42歳のデザイナー、ジョージ・モンローは、妻子と別れ古びた海辺の家で暮らしている。会社を解雇された直後に倒れた彼は、担ぎ…

『王妃の離婚』 『愛を読むひと』

気分転換に現実とかけ離れた小説はなかったか、と自宅の本箱をあさる。目に飛び込んできたのは、佐藤賢一『王妃の離婚』、1999年の直木賞受賞作。これがいい、かなり面白かった記憶がある。ページをめくる手が止まらない。映画を見ているように映像が浮かん…

泉鏡花『夜叉池』

8月2日放送の日曜美術館は「あやし おどろし 妖怪絵巻」。なんとも愉快なそのタイトルに惹きよせられ家事の最中であったものの、テレビ画面をチラチラと見やることとなった。その夜半、汗を滲ませて目覚め、今年も早や8月であることを実感する。暑さを呪い…

睦月の道楽

2015年1月も終わる。中旬には風邪をひき、家でネットの無料映画を何本か見てすごした。普段見ることもないジョージ・クルーニーの主演作『ラストターゲット』であったり、アメリカの青春もの『シンデレラ・ストーリー』であったり、FBI捜査官のコメディー『…

ドクトル・ジバゴ

今年、最初に見た映画は深夜に放送された『ドクトル・ジバゴ』(1月1日0:00〜3:55 BS朝日)であった。監督デヴィッド・リーン、1965年のアカデミー賞受賞作である。美しいテーマ音楽が全編を支配するこの映画を、私はよく知っている気がした。しかし、かつて…

木村大作『春を背負って』

体調不良を理由に北アルプスを離れ、3年が経つ。近頃、老齢の両親は「やめてくれてよかった」としみじみと言う。現役の頃には「気をつけて」の一声で送り出され、深く語ることはなかったが、山岳事故のニュースを目にすれば山行中の私をさぞや案じたのではな…

ベン・スティラー「LIFE!」

地方を訪れた際、スケジュールの都合上、ポッカリと空いてしまった時間をどうやって過ごそうかと思うことがある。私の場合、行き先は温泉、神社仏閣、美術館、はたまた映画館といったところだ。で、本日は映画を選択! 上映スケジュールが私の時間とマッチす…

利休にたずねよ

話題の映画「利休にたずねよ」を観る。レビューの評価は芳しいものではない。三千家が協力に名を揃え、名腕を実際に使い、破格のキャスティング、原作は直木賞受賞作である。制作側は、こんなにも評価が低いとは思わなかったのではないだろうか。茶の湯を知…

武士の献立

連れに付き合い、静岡に到着したのは、12時少し前。連れが所用を済ませる間、話題の「利久にたずねよ」を観ようと、迷わずシネコンに向かった。井戸茶碗に高揚されてのことだ。シネコンに駆け込むと「利久にたずねよ」の上映時間を確認する。残念! 15分前に…

クリストフ・バラティエ「コーラス」

コーラス メモリアル・エディション [DVD]出版社/メーカー: 角川ヘラルド・ピクチャーズ発売日: 2005/12/22メディア: DVD購入: 3人 クリック: 30回この商品を含むブログ (143件) を見る 1940年代のフランス、問題児を収容する「池の底」という名の寄宿舎を舞…

「福本章 二都物語 プロヴァンスからヴェネツィアまで」

イタリア文化会館にて「福本章 二都物語 ヴェネツィアの光展」(5月24日-6月22日)が開催中である。福本章は1932年岡山に生まれ、芸大では林武教室に学んだ。1967年画家の登竜門「昭和会展」で昭和会賞を受賞し、同年ヨーロッパに渡っている。以降、フランス…

ジェラール・ドパルデューの『グリーンカード』

グリーン・カード [DVD]出版社/メーカー: ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント発売日: 2003/01/17メディア: DVD クリック: 6回この商品を含むブログ (1件) を見る眠れない一夜、TVをつけると、大柄な男の姿があった。 彼、ジェラール・ドパルデューであ…

カミーユ・クローデル

本日の日曜美術館アートシーンは、〈世界美術館紀行〉ロダン美術館の放映であった。オーギュスト・ロダンを語る時、彼の弟子であり愛人、そしてミューズであった1人の女性芸術家の存在を切り離すことは出来ない。カミーユ・クローデル、ロダンと出会い才能を…

A・S・バイアット『抱擁』

抱擁 (1)作者: A・S・バイアット,太原千佳子,栗原行雄出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1996/04メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 久しぶりに読みごたえのある小説に出逢った。『抱擁』”Possession: A Romance”(新潮文庫)は…

「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」

雨は朝から、しとしとと降り続いている。旅先の静岡で、私に降って湧いた空白の3時間。過ごし方をカフェでぼんやりと考える。この天気では、神社仏閣巡りはままならないし、静岡県立美術館はアクセスが面倒だ。静岡市美術館は近くだが、開催中の「竹久夢二」…

ルキノ・ヴィスコンティ 『家族の肖像』

年末年始にイタリアを旅したという福島の友人Kから、半月遅れの誕生日プレゼントが届いた。愛娘とともにローマ、ポンペイ、フィレンツェ、ヴェネツィア、ミラノを巡ったそうだ。 移動で忙しい旅にあって、あれやこれやと選んでくれたのだろう。フィレンツェ…

モン・サンミッシェル ブニュエル「銀河」

ルイス・ブニュエルの映画「銀河」(1969年)を見たのは、池袋文芸座のブニュエル3本立のうちの1本であったか…いずれにしろ学生時代のことで記憶は定かではない。質素な身なりで巡礼の旅を続ける二人の男。時と空間は交錯し、あるときは創世記のエルサレム、…