話題の映画「利休にたずねよ」を観る。レビューの評価は芳しいものではない。
三千家が協力に名を揃え、名腕を実際に使い、破格のキャスティング、原作は直木賞受賞作である。制作側は、こんなにも評価が低いとは思わなかったのではないだろうか。
茶の湯を知るものは史実との矛盾にとまどい、日韓関係に不満を持つものは今何故かと憂いる。原作を読んで腑に落ちなかった部分がより明るみに出てしまった感がある。
「全く新しい利休が、ここに誕生する」との謳い文句も、常に葛藤を抱えながらの鑑賞であれば、胸に落ちるものではない。
「美」という概念を、利休という一個人を盾に、押し付けられたような気もした。脚本、演出、あるいは茶聖利休を若き海老蔵に配したキャスティングのせいであるのか、どうにも居心地が悪い。
海老蔵のファンはどう感じたのだろう。抑えた演技に彼の新たな魅力を見出したのだろうか。
しかし、目を奪われたシーンもあった。信長を演じた伊勢谷友介は、芸術を愛した冷酷非道の武者の一面はかくやと思わせた。また妻宗恩役の中谷美紀、古渓の中村嘉葎雄、茶屋のやり手を演じた大谷直子は適役であったろう。
そして、心に残ったのは利休、宗恩の所作の美しさ。日本人の形式を重んじる美であった。自らを顧み、恥じる思いがした。
「利休にたずねよ」公式サイト http://www.rikyu-movie.jp/
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