モン・サンミッシェル ブニュエル「銀河」

izaatsuyoshi2009-09-24


ルイス・ブニュエルの映画「銀河」(1969年)を見たのは、池袋文芸座のブニュエル3本立のうちの1本であったか…いずれにしろ学生時代のことで記憶は定かではない。

質素な身なりで巡礼の旅を続ける二人の男。時と空間は交錯し、あるときは創世記のエルサレム、あるときは中世のスペイン、あるときはフランスは18世紀、サド侯爵の時代へと、コラージュのようにイメージは往来する。無神論者を自負するブニュエル映画であるが、カトリック社会の一端を見せてくれたものだった。

急なフランスへの旅立ちに、スケジュールの合間をぬって、モン・サンミッシェルを訪れることにしたのは、巡礼地としてのイメージが強く記憶されていたからである。またさらに自己分析をすれば、ブニュエルの映画にのめりこむようにして、異文化に挑んでいた学生時代を懐古したいがためとも言えるだろうか。

さて、訪れたのは、今にも空が泣き出しそうな曇天の1日。

かつて巡礼の地として名を馳せたモン・サンミッシェルは、今や観光客であふれ土産物屋を覗く日本人も多い。駐車場には大型バスが幾台もあふれる大変な観光地と化していた。昔日のように歩いて巡礼をするカソリック信者もあると聞くが、昨今の世界遺産ブームは、聖地を観光地に変貌させたようだ。

しかしながら、壮大な塔の上で金色に輝く聖ミカエルの姿は厳しく、うつつの人々の所業をいつの日も天秤にはかっているのだろう。少なからず失望もあったモン・サンミッシェルへの旅だが、帰国後、引き出しにしまい込んでいたウッチェロやボッティチェッリ描く「聖ミカエルとドラゴン」の小さな複製画を机上に飾らせたものだ。ブニュエルの3本立てを見ることに熱中した、遠い日の自分と再会出来たのかもしれない。

銀河 [DVD]

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