フェルディナント・ホドラー展

「躍動する生命のリズム―スイスが誇る異才、40年ぶりの大回顧展」

このコピー通り、これほど多くのフェルディナント・ホドラーの作品を見たことはない。

貧しい家庭に生まれ肉親を早くに失い、前半期の作品には「死」や「憂鬱」のイメージがつきまとう。しかし20世紀を境に「生」の芸術へと転換、スイス人画家ホドラーは覚醒する。

世紀末芸術の巨匠であるとともに、「木を伐る人」をはじめ「生」の時代の作品が、今日まで彼をスイスの「国民の画家」へと押し上げたのだろう。

しかし晩年は彼のミューズであった愛人の、死にゆく日々を描くなど、画家としての生涯は波乱に満ちていた。

会場をすすむと画風の変遷、主題により、様々な画家の名前が頭をよぎった。コロー、モーリス・ドニムンクセガンティーニ、フリードリヒ・・・

印象に残ったのはアルプスの象徴的な風景。今度はトーマス・マンヘルマン・ヘッセ、C・F・ラミュズら作家の名前が頭の中で踊り出す。絵の中を漂う不可思議な雲のように、文章のキレハシが浮かんでは消える。

自然の秩序、動的なリズムを抽出して描いたホドラーの絵画に刺激されたか、私の中に遠い記憶の断片が繰り返し巡りだしたようであった。


Ferdinand Hodler

Ferdinand Hodler