生誕140年 二つの旅 青木繁×坂本繁二郎

アーティゾン美術館にて

福岡県久留米市に生まれた同い年の画家、青木繁坂本繁二郎の生誕140年を記念する展覧会。

www.artizon.museum

「海の幸」や「わだつみのいろこの宮」などの傑作を残し、肺結核を患い28歳で逝った青木繁坂本繁二郎はその没後、遺作展を開き、また画集を編纂するなどその画業を顕彰した。

坂本はこののちも画家として順調な人生を送る。パリ留学後は故郷久留米に戻り、また八女市に移って「放牧三馬」や能面、月を主題に抒情的な作品を描いて高い評価を得、87年の生涯を終えた。

青木の「海の幸」、そして圧倒的なエネルギーを放つ「自画像」(1903年)にうなる。

そして久しぶりに見た「わだつみのいろこの宮」、忘れられない作品のひとつだ。美術と文学における浪漫主義的風潮を受け古事記をモチーフに、またギュスターブ・モローやラファエル前派など西洋美術の影響をうけつつ完成させたこの作品は、夏目漱石に絶賛を受けるも評価が分かれ、東京勧業博覧会で三等末席に終わる。失意の青木は故郷に戻り、九州を放浪の末、道半ばで倒れるのだ。

「わだつみのいろこの宮」を前に、『海彦と山彦』の物語を読んだ遠い子供時代の記憶は青木繁の心情とせつなく交錯し、何とも言えない感情がこみあげてきた。

 

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さて、訪れたのは急ぎ実家から戻った土曜16時のこと、最終日の前日で混雑を予想していたが入館者は多くなかった。コンテンポラリーの展覧会が席巻する現在、若い世代の日本近代洋画離れが進みつつあるのだろう、残念である。