妙義山

群馬県の名峰、妙義山を歩く(10/12)。

坂本繁二郎とともに訪れた青木繁が、この山でのスケッチを残しており、以前から興味があった。現地に一歩足を踏み入れれば、妙義山神社を入り口とする修験の地であり、信仰の気を深く感じさせる。

奇岩をめぐるハイキングには1時間から3時間半とさまざまなコースがあり、ルートは多彩に選択できるようだ。しかし妙義の主峰白雲山、これに連なる金洞山の山頂の縦走は8時間もかかるとのこと。険しい山容に相応しく鎖場が幾重にも連なり、時にザイルも要するルートだという。友人から聞いていた所要時間半日というのはハイキングコースのことであったらしい。

11時に登山口に到着した我々には時間が足りず早々に縦走はあきらめたが、ザイルこそ携えてはいないものの高山登山のいでたちで家族連れが行きかうハイキングコースを歩くのも気が引け、取りあえず奥の院まで行くことにした。大の字の岩上から麓の景色を眺め、奥の院で折り返し、帰途に持参の昼食をとった。慣れ親しんだ北アルプスとは異なる岩に思いのほか苦戦をし、鎖場では連れに指導を受けながら通過したが、妙義山頂の縦走は握力のない私には困難なルートであったろう。

2時間半ほどで参道の土産物屋に舞い戻り、行楽気分でビールを2本ほど空けながら、店の女主に今宵の宿を問う。近隣の磯部温泉、あるいは足を延ばし伊香保温泉に行ってみてはどうか、と勧められる。3連休のなか日であるこの日の伊香保は宿が取れず、磯部温泉に泊まることにした。

ひと風呂浴びて、夕食までの間、町を散策する。今宵の宿泊施設はここ磯部でもほとんど満室であると聞いていたが、町は昔ながらの温泉街の風情を残して、まったく静かなものであった。通りには名物の炭酸煎餅を焼く店が軒を連ねており、なかの一軒で、煎餅に気のなさそうな我々を酒豪とふんだものか、この辺りでは珍しく品揃えが豊富だという酒屋を紹介された。

「高野酒店」というその店では、奥まで続く棚に地方の銘酒が分別されて並び、壮観であった。嬉々として語る主人の説明に耳を傾け、酒談義に楽しく30分ほどを過したが、結局、飲みなれた八海山の、今宵は特別、純米大吟醸を求めた。

宿では部屋まで夕食を運んでもらい、料理を肴に八海山を空けた。窓の下には碓井川が流れ、素晴らしい展望が広がっている。しかしながら、本日の妙義登山は消化不良に終わり、山行のあとに訪れる達成感は皆無である。さてさて明日は何をしようか、頭をかかえたものであった。


高野酒店  http://www.aritaya.com/recommend/2takanosaketen/takano.html