「みのむしやなかなか こえのおもしろし」
先日来時折、石川丈山の句が頭をよぎる。この句に接するとき、心晴れやかであるのか、悩みを抱えているのか…。人それぞれ思い浮かべる鳴かぬ虫の声には、ひとつとして同じものはなかろう。
下記にリンクする実に興味深いページによれば、平安の昔より、蓑虫の下がるあたりから聞こえる「チッ、チッ、チッ」という声が、蓑虫のものだと思われてきたという。声の主は、実はカネタタキという虫であり、なかなか姿がとらえられないことから、蓑虫の発する声と信じ込まれてしまったようだ。
丈山は、このカネタタキの声に興味を示し、これを詠んだのであろうか。しかしこの句には、鳴けない哀れな蓑虫の声を「おもしろし」と詠んだ丈山の、禅問答にも似た問いかけがあるように思えてならない。