草木ノート

izaatsuyoshi2008-08-27



宇都宮貞子著『草木ノート』1970年 読売新聞社

松本市内の古書店、慶林堂にて母の土産に求む。宇都宮は1908年、長野に生まれ、植物に関するエッセイを数多く著している。長年にわたって、草木にまつわる文を綴っている母は、興味をもって読んでくれると思う。

父母は江戸中期から続く古い家を守り、草や木、鳥や花とともに毎日を暮らしている。そのように晩年を生きたいと、多くの知人が言う。ありがたいことである。離れてみれば、なるほど、日々のわずらわしさがかすんで、二人の清澄な暮らしが見えてくる。

春に桜を、夏は早朝の朝顔を愛で、盆には精霊棚と提灯で先祖を敬う。秋には紅葉狩の客を迎え、冬は庭に来る野鳥に餌を撒く。正月は屋敷のそこかしこに供物をかかさず、節分、彼岸、月見、年の瀬と、失われつつある日本の美しい慣習に彩られた静かな生活をおくっている。

人生の楽しみは、折々の自然の中にあり、変わらない毎日にあるということであろう。