初炭手前

拙宅にて

初炭手前の稽古をする。

仕事を終え20時頃に稽古に駆け込む私は、炭手前の稽古に間に合うことは稀であった。そうであっても、師が繰り返した「炭おくはたとひ習ひに背くとも湯のよくたぎる炭は炭なり」という利休百首は耳に残っている。胴炭をうまく持てない私への励ましであったかもしれない。

茶事の前に自宅で稽古を重ねているうちに、その手順には無駄がなく、よく湯がたぎるよう炭が置かれること、それがひとつの美しい景色を形作ることを実感した。

晩秋の茶事にお招きしたY先生が「炭の匂いが懐かしい、赤々と燃えるさまはきれいだね」としみじみと話された。確かに肌寒い時期は、尉(じょう)になるまで燃える炭の美しさ、その温かさを心地よく感じるものだ。

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瓢葛の葉蒔絵香合

炭を扱うことは非日常の行為であるが、日常にあるように炭をつぎたいもの。
炭手前をするのも久しぶりで、覚えのために手前順序を記す。唐銅の風炉であるため、灰器はなし。

手前順序
・炭取を運び出す(主客総礼)
・道具を置きつける(羽、かん、火箸、香合)
・釜の蓋をしめてかんをかける。
・釜敷を出す
・一膝風炉前にすすんで釜を上げ、下座へ
・初掃
・火箸をとって下火を直し、炭(胴炭、丸ぎっちょ、割ぎっちょ、管炭、枝炭)をつぐ
・後掃
・香をたく
・香合を拝見に出す(一膝客付きへ向き、貴人畳のかどへ出す)
・釜を風炉にかける
・釜の蓋を掃き、蓋を切る

・香合拝見
・あいさつののち香合を取り組む