懐石リハビリ

「おまえ、料理が下手になったなあ!」と連れがしみじみと言う。

何をか言わんやその通り、このところ簡単なオードブルでお茶を濁し、メインは見た目の派手なオーブン料理となれば、当方とても自覚症状大アリである。

そこで、懐石への情熱を呼び戻すべくリハビリを図り、三連休の初日、秋の茶懐石で連れをもてなすことにした。奢りを捨て去り初心に帰って辻留の懐石本を紐解く。

真蒸は鱈の身と貝柱をいちから摺って少量の大和芋をあわせてみた。小骨はすべて抜いたつもりであったが、連れの椀でただ一本発見された。加えて柔らかすぎるとの指摘も受けたが、台所にどんと構える摺り鉢に日頃見られない熱意は感じてくれたのだろう。連れからは及第点をもらうところとなった。

さて、その献立は次の通りである。

  • 向 う(鼠志野/絵唐津 桃山時代)烏賊の細作り紫蘇和え、山葵、二杯酢
  • 石 盃(黄瀬戸平盃 桃山時代/堅手盃 李朝時代初期)獺祭スパークリング50
  • 煮物椀(網目椀)萩真蒸、南瓜、人参、柚子
  • 焼 物(古染付漢詩文平皿 明末)ホタテ菊花焼き 
  • 進 肴(備前平鉢)鶏肉、蓮根、銀杏の甘酢餡
  • 小吸物(ガラス小鉢)大和芋・メカブ
  • 香 物(三島鉢)大根の一夜漬け
  • 飯 椀(真塗)一文字飯
  • 汁 椀(真塗)キャベツ・人参の合わせ味噌仕立て、溶き辛子

余談であるが、本日は下拵えを終えたところで和服に着替えた。この陽気では、と単衣を選択。大叔母から譲り受け、茶の稽古によく着ていた紬に袖を通した。濃いグレー地に煉瓦色の飛び柄を織り込んだものだが、こんな地味な紬を若い時分によく着ていたものだと、懐かしく思った次第であった。

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