実家にて
4月5日、桜を追っての茶事は実妹が亭主を務め、客は茶友のご婦人方。桜尽くしの道具組は綺麗綺麗の趣きである。水屋は亭主の夫君が担い、当方はいつものごとく懐石を請け負った。
床飾りは百人一首から花に寄せた歌を選び、札を盆に並べた。こうして花の歌を並べてみれば、それぞれの人生が垣間見え、改めて歌の面白さに魅せられる。
花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに 小野小町
久方の光のどけき春の日に しづこころなく花の散るらむ 紀友則
いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな 伊勢大輔
もろともにあはれとも思へ山桜 花よりほかに知る人もなし 大僧正行尊
人はいさ心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香ににほひける 紀貫之
懐石献立
- 向 う 平目昆布〆、防風・山葵
- 煮物椀 鴨丸(春牛蒡を混ぜて)花人参・こごみ・吸口に針生姜
- 焼 物 筍、木の芽を振って
- 強 肴 蕗・筍芋の炊き合わせ、胡麻味噌をかけて
- 貝柱・独活・三つ葉の和え物
- 小吸物椀 昆布・梅干・桜麩
- 八 寸 真蒸の三色団子・蚕豆
- 飯 蟹と生姜の蒸飯、筍の皮に包んで
- 香 物 沢庵・菜の花
- 主菓子 花みやび(鶴屋吉信製)
このところの花冷えに庭の桜も満開の風情。客人には茶室内外の花見を存分に楽しんでいただけたようである。