2009-01-01から1年間の記事一覧

昆布〆の鯛

鯛を昆布〆にする場合、淡白なヒラメより〆る時間を長くし、また適量の重しを乗せることにしている。鯛独特の癖、臭みを抜くためであるが、これは極めて私的な好みであり、個人の嗜好により〆方は変わってこよう。鼠志野の向付に盛りつけてみた。この向う、…

つながるヨガペンギン

「天然水に付いてくるんだよ、いいだろう?」 手に載せられたのは小さなペンギンのフィギュア、10日ほど前のことである。それから毎日1羽ずつ増え、困ったことに3羽目で、なるほど面白い、かなり可愛いものだと思ってしまった。このペンギンたち、あるものは…

花見弁当

桜も七、八分咲きとなり、花見に出かけることにした。鼻歌まじりで弁当を作る。重箱に筑前煮、出汁巻卵、焼き目をつけた薩摩揚などを詰め、椀型の点心弁当には筍御飯と和え物、香の物を盛りつけた。行楽弁当は作っているだけで不思議とワクワクする。徳利は…

春雷 立原にて

立原にて春を食す。連れは予約の時間より20分ほど早く到着し、店の主人立原氏と昔話に花を咲かせていたようだ。今夜の客は我々だけあり、立原氏との話もはずんだ。恵比寿の店を閉めてから早や10年になるという。当時、この店の閉店を知らなかった我々は、予…

春の酒宴

「赤貝のぬたが食べたいものだ、向うは天然のヒラメがいい」 「美味しいヒラメがあるといいね」 幸いに長崎産の天然ものが手に入り、ヒラメを主役に昼下がりの宴となった。絵志野向付に盛る。草花が大胆に描かれており、返しのある縁の意匠とともに、桃山時…

山上の茶事(壱)

ふた月ほども前のことになろうか、京都から来られる客人を茶席でもてなしたい、ついては懐石をお願いしたいのだが、と鎌倉住まいの某氏から依頼があった。このところ茶事から遠ざかっており自信がなかったものの、老舗茶道具商からもお一人手伝いに来られる…

蕎麦屋にて

週末の昼下がり、都内A駅近くの蕎麦屋で一杯。まずは味噌田楽でビールなり。ブログ更新もご無沙汰につき、それでは味噌田楽の撮影を、とカメラをのぞく傍から手がのびる。この蕎麦屋、なかなか美味いが、給仕のお姉さん方の愛想のないことこの上なし。ビール…

緑にゆだねる

どうやら私のエネルギー源は、鬱蒼と茂る木々の緑であるらしい。山に登るのも「緑」に全身をゆだねたいという思いからであろう。午後、茶会帰りのMと箱根で待ち合わせ、奥湯本の温泉に「緑」を訪ねた。浅春の湯治場の庭には、枝垂梅が咲き誇り、気高い梅の香…

フィクションの功績とは?『利休にたずねよ』山本兼一

某数寄者曰く、歴史小説は求めども時代小説をたずねず。また某美術評論家曰く、フィクションに面白さを知らずと。昨今、話題の小説『利休にたずねよ』を読む。茶の湯初心者、日本文化に漠然とした憧憬を抱く人々の興味を、大いにそそる内容だろう。しかし、…

スメタナ「わが祖国」

指揮 ラドミル・エリシュカ(1931年チェコ生まれ)エリシュカの指揮棒は、穏やかに、堅牢に祖国を語った。白銀におおわれた大地も、春が来れば緑に燃え出す。自然は静かに変容をとげ、そして回帰する。人々の生活もまた同様。喧騒を極めた戦いも、栄光のもと…

寿福

1月半ば、周囲で持ちきりの話題があった。A氏が投函した賀状の1枚に、1等当選番号が含まれていたという。当るはずもあるまいと、笑って聞き流したが、思い当たる人々はすぐさま照合をしたようであった。3日経ち、当選者はあらわれなかった。一方、にわか捜…

常連客

日曜の夕刻、連れの足は自然とガード沿いの居酒屋へと向かう。どこの誰より料理にうるさい粋人も、学生時代を思い出すのだろう、ここだけは舌も別ものらしい。店の常連は、学生から老人までさまざまだ。互いに言葉を交わすことはないが、今や、顔見知りの間…

七草粥

早いもので正月も7日である。無病息災を願い、朝食に七草粥を作る。近年は、スーパーでも七草のすべてを手に入れることが出来る。七草はよく洗い、2センチほどの長さに揃えきざむ。すずな(蕪)、すずしろ(大根)はアラレ切りに。米は昆布だしで40分ほどこ…

小紋の着物

正月5日、大伯母譲りの江戸小紋にはじめて袖を通す。新春には地味な紫地に白の小花紋だが、台所と食卓を行き来する身には丁度いい。ガラス重箱に盛り付けた料理も、すでに正月の華やかさは失せ、いつもの献立に戻りつつある。こんな料理にこそ、時節の移りを…

正月祝いの膳

正月3日、気のおけない茶友を招き、新年を祝う。毎年恒例、妹の誕生日祝いを兼ねた初釜代わりの新春の宴だ。本年は6名の客を迎え、夕刻6時半、開宴となった。例年献立は、茶懐石の流れを基本にしているが、前菜にはおせち料理を召し上がっていただいている。…

日々是好日

年が明けた。穏やかな1年であれ、と心から願う。一昨日に帰郷し、晦日の仕事も終えて、昨夜は0時前に床に入った。同時に、携帯がなった。山上の茶室にこもり、一人仕事を続けている人からであった。これから茶室脇の鐘楼の鐘をつくという。いくぞとばかり…