花見弁当

桜も七、八分咲きとなり、花見に出かけることにした。

鼻歌まじりで弁当を作る。重箱に筑前煮、出汁巻卵、焼き目をつけた薩摩揚などを詰め、椀型の点心弁当には筍御飯と和え物、香の物を盛りつけた。行楽弁当は作っているだけで不思議とワクワクする。

徳利は中川自然坊の朝鮮唐津、ゴツゴツとした肌の力強い器だ。石盃は刷毛目、井戸茶碗写しの新物を二つ、ビール用のグラスも忘れずに、塗盆と一緒に大きなバックに詰め込む。酒は八海山…ビールは道中に調達するとしよう。片や、シートと厚手のウールショールをパッキング。大きな荷物を抱えていざ、出発である。

週末の井の頭公園は、昼前にもかかわらず花見客であふれていた。我々はひと気の少ない池のほとりに陣取り、盆の上に弁当を広げる。ビールをグラスに注いで乾杯し、すぐさま日本酒へと移った。思ったとおり自然坊の徳利は野外で生きる。

本日の弁当、味はもちろん、彩りも美しい自信作。雅な仕立てであるとうぬぼれるが、より茶懐石に沿い、八寸、茶箱を用意すれば、存外一椀の茶も楽しめ興も増したことだろう。

頭上から、花びらが降ってくる。大きなショールの上に寝転んで桜を見上げた。池の面には鴨が泳ぎ、時折亀が首を覗かせた。晴れたり曇ったりの空模様、まずまずの花見日和であった。

献立

  • 筑前煮(鶏肉・筍・牛蒡・蓮根・人参・蒟蒻・鶉卵)
  • 出汁巻卵
  • スナップ豌豆の塩茹で
  • 玉葱と白身魚の薩摩揚(コチジャンを添えて)
  • 胡瓜とちりめんの胡麻和え
  • 筍御飯(木の芽)
  • 香の物