常連客

izaatsuyoshi2009-01-19


日曜の夕刻、連れの足は自然とガード沿いの居酒屋へと向かう。どこの誰より料理にうるさい粋人も、学生時代を思い出すのだろう、ここだけは舌も別ものらしい。

店の常連は、学生から老人までさまざまだ。互いに言葉を交わすことはないが、今や、顔見知りの間柄である。

本を片手に一人飲み続ける男、ジャーナリストくずれの口喧しい団塊世代、山男と幼子を抱く若い妻、どうにか役者で食えるようになったと笑う青年。聞こえてくるのは、さながら江戸の人情話だ。一方、なけなしの金を懐に、テーブルを囲む学生たちは、夢を語るに忙しい。

寒中にもかかわらず、この店の軒先には簡素なテーブルと椅子が並ぶ。足元には七輪が赤々と燃え、軒には年中の提灯が揺れる。ここがいい。常連客を遠巻きに、我ら火の傍、気に入りの席。