昆布〆の鯛

izaatsuyoshi2009-04-12


鯛を昆布〆にする場合、淡白なヒラメより〆る時間を長くし、また適量の重しを乗せることにしている。鯛独特の癖、臭みを抜くためであるが、これは極めて私的な好みであり、個人の嗜好により〆方は変わってこよう。

鼠志野の向付に盛りつけてみた。この向う、釉の薄がけ部分の赤みが強く、志野釉(鼠色)との対比が美しい。箱書きには荒川豊蔵の筆にて「美濃古窯大萱でやかれし物也」とある。形状、絵付けの意匠とともに桃山陶の魅力が十分に感じられる器だ。

茶懐石では、器と食材との盛付けの妙が、器を引き立てまた味を引き立てる。本日は内輪の酒宴につき、食材の量が多いが、お許し願おう。

盃は青磁、徳利は先日の花見で活躍した自然坊の作。桃山の向うに並んで違和感はなく、器自身の強さが見てとれる。古武士さながら片膝を立てて座す粋人と盃を交わしながら、この剛直な徳利が戦国の世の宴席に置かれた姿を連想した。