正月5日、大伯母譲りの江戸小紋にはじめて袖を通す。新春には地味な紫地に白の小花紋だが、台所と食卓を行き来する身には丁度いい。
ガラス重箱に盛り付けた料理も、すでに正月の華やかさは失せ、いつもの献立に戻りつつある。こんな料理にこそ、時節の移りを実感する。
〆は牡蠣飯とした。おせちに飽きた連れは、これが食べたかったと頗る嬉しそうである。
実家では、火鉢に炭を入れ客を迎えたが、帰京してはエアコンの生活に戻った。楽ではあるが、趣きは大いに欠ける。膝元で、炭がちろちろと瞬く様は、実に心なごむ景色であった。茶の湯を楽しんだ大伯母の生活も、炭の暖かさに彩どられていたことだろう。
献立
- 前 菜 筑前煮、酢蓮、ホタテ貝柱山椒煮、蒲鉾、金柑甘煮(金縁ガラス重箱)
- 煮物椀 貝柱の真蒸、青菜、柚子
- 焼 物 鯛塩焼き
- 強 肴 小松菜の胡麻和え
- ピーマンと雑魚の炒め
- 飯 牡蠣飯 山椒
酒