フィクションの功績とは?『利休にたずねよ』山本兼一

某数寄者曰く、歴史小説は求めども時代小説をたずねず。また某美術評論家曰く、フィクションに面白さを知らずと。

昨今、話題の小説『利休にたずねよ』を読む。茶の湯初心者、日本文化に漠然とした憧憬を抱く人々の興味を、大いにそそる内容だろう。

しかし、巻末の参考文献には、現代の読み物ばかりが並ぶ。往時に比べ、美の価値がいよよ判然としない今世紀にあって、日本人の美意識を示唆する読み物であろうが、読後の虚しさは如何ともしがたい。

本著の直木賞受賞に現代日本人の資質に危機感を覚える、とは言い過ぎであろうか。


利休にたずねよ (PHP文芸文庫)

利休にたずねよ (PHP文芸文庫)