オモニの店

久しぶりに韓国家庭料理の店を覗く。15年、この店を一人で切り盛りをしているオモニに「本当にィ、久しぶりネェ!」と笑顔で迎えられた。彼女は目がきりっとしたなかなかの韓国美人である。

生ビールとキムチで乾杯。昨今、挨拶代わりの話題は新型インフルエンザだ。

「韓国では発生してナイヨ。いつもキムチを食べてるダカラ。韮も大蒜もウィルスに強いネ。だからぁ、韓国ゥ、身体強いんダヨ!」 日ごろの食生活が身体を作るというわけだ。サプリメントや薬に頼らず、食物で健康な身体を維持するのは理想であろう。

次いでエリンギと牛肉の炒め、チャプチュ、チヂミと注文し、本日は、マッコリを楽しんだ。連れはオモニに「マッコリ」の本場の発音を教えてもらっていたが、なかなかうまくいかない様子である。

「舌でェ、上あごをなめるようにするイイ。わかるゥ?」  だが、何回繰り返しても、連れの口から出るのは喉をしぼったような声で 「マッコロッリ」、しかも必ず舌が出る。 「ちがうネ、喉つかわなイ、舌は出さないネッ!」 

根気よく教えていたオモニもいつしか呆れ顔、当方と言えば 「マッコロリ」 だの 「マッゲロリ」 だのとゲホゴホと真剣に復唱する連れを、軽蔑とも尊敬ともつかずチラチラ見ながらため息をついた。

まあ、なにはともあれ本場のキムチとマッコリの取り合わせはいい。しかし、マッコリの呪文が効いて調子に乗りすぎ、幾分、飲みすぎたようだ。「これじゃ、新型インフルエンザより、飲みすぎ、食べすぎに注意だね」 店を出て連れと語ったものである。