温泉はしご 湯河原温泉「ま々ねの湯」

ゴルフに熱中しすぎたためか、このところ連れは膝に痛みが走るのだという。幾度か整体に通い、先月は湯河原に、2週間前には箱根に行き湯に浸かった。

そして、この週末は熱海、湯河原と温泉のはしごをしたいと言い出した。連れは7月半ばにゴルフコンペを控えているのだ。

湯河原ではタクシーの運転手に勧められ、共同浴場の「ま々ねの湯」に向かうことになった。湯河原温泉は源泉の温度が高いため加水している施設が多いそうだが、「ままねの湯」は80度を超える源泉を冷まして使用しているらしい。

湯河原駅から奥湯河原に向かう幹線道路をタクシーで10分ほど走った。左手の路地の入り口で車を降りると、運転手が言った。「水で薄めてないから湯はいいよ、だけど気をつけてください。あっついですよぉ!」 

細い路地には古い構えの小さな旅館がいくつか立ち並んでいる。路地の奥に「ま々ねの湯」と大きな看板がかかる古い造りの建物が見えた。無人の入り口から中を覗いていると、女性の声がした。

「お客さん、はじめて? 温泉なら一人200円、部屋で休みますか? それなら400円ずつ追加ね。さあさあ、上がってください、靴はそこ! 部屋に荷物を置いてね! 温泉は下ですよ!」

通された部屋は入り口からも見える、厨房に面した和室であった。開け放された誰もいない二間続きの部屋にはテレビが一台鎮座し、大音量で刑事者が映されていた。どうやら今しがたまでこの女性が見ていたらしい。

荷物を置いて階下の湯に向かう。カーテンで仕切られた男湯と女湯の入り口があり、中には小さな脱衣所がある。湯殿では2人の先客が湯船の縁に腰を掛けていた。「熱いですよ! でもあなたなら入れるのじゃないかしら? 頑張って!!」

こわごわと湯船に足先を入れてみたが、とても入れる熱さではない。先客が笑って言った。「温度計を見てごらんなさい! 48度よ!」

湯を桶に汲み冷めるのを待って身体にかける。徐々に熱さには慣れたものの、湯船には腰まで浸かるのがせいぜいであり、しかも10秒と入っていられなかった。

湯から上がると、すでに連れは休憩室に座し先ほどの女性と話をしていた。女性が厨房に消えてから、連れはミズノオープン(ゴルフ)にチャンネルをあわせて、小声で言った。「生ビールを頼んだんだけどね、アルコールはないんだって! 湯上りの客にアルコール出して何かあるとまずいからだって、よっぽど湯が濃いんだねえ?!」

厨房から何人かの女性の賑やかな声が聞こえてくる。その様子に連れが言った。「宿泊も出来る・・・湯治客がいるんだ。一泊二食付きで6000円だって!」

ここには地元の人々が毎日のように訪れると言う。連れは2度湯を浴びに入ったが、私は1度で十分だった。熱すぎてゆったりと湯船に浸かるというわけにはいかなかった。しかし湯上りの肌はつるつるとして気持ちが良かった。連れの膝の痛みも和らぐといいのだが。

連れは「ま々ねの湯」の名の由来が気になるようだった。次回訪れる時には聞いてみることにしよう。