連れと久方ぶりの箱根に出かけた。
朝御飯に携えた弁当は、牡蠣と生姜の炊込ご飯に唐揚、出汁巻玉子、ブロッコリーの塩ゆでと、いたってシンプル。
牡蠣が大好物の連れはご飯を口に運んで一言。
「今年はこれを最後にしよう。旬の牡蠣の美味さは失せたね」
とは言え、炊込ご飯を早々にたいらげ、菜に箸を伸ばしながら弁当の蓋に何やら作り始めた。
ほどなくして、車窓の眺めを借景に、唐揚と出汁巻玉子とブロッコリーによる即席の蓬莱山が出現した。
さしづめ出汁巻玉子は枯山水の流れといったところか・・・
蓬莱山に見立てた唐揚に、炊き込みご飯の天に散らした春菊を貼り付け、苔に見立てるなど細工にも余念がない。
作庭家はまさに満足の態。箸をつけずにニヤニヤ。
「ご苦労様でした・・・が、良い子は食べ物で 遊ばないように!」と声をかけるやいなや、蓬莱山はあとかたもなく連れの口の中へと吸い込まれていった。