桜素浪人


今春も定石にしたがい、近隣の桜見物にぶらぶらと出かける。道沿いの桜、曇り空に映えて美しい。春靄にけぶるの感なり。

馬橋稲荷神社にさしかかる。境内の桜、まさに満開である。昇龍降龍が纏いつく石造りの鳥居の下、花見に悦にいる1匹の老猫に遭遇ス…。

生来猫には目がない当方、桜を愛でる思いは一緒とばかり、その小さな頭をよしよし、と撫でる。甘噛みされ、可愛いやつよ、とさらにひと撫でふた撫でと…。呆れ果てた連れからは、先に行くぞ、と声が飛ぶ。

その折も折、猫の尖頭歯は我手のひらに深く深くと噛み入ったっ…桜と龍に惑うたか、南無三!! 嗚呼、この日この時まで、犬、猫との交歓に絶対の自信を持って臨んでいたが、ついに気も動転!! 本日の花見はこれまでと、急ぎ帰宅へ計画変更。

一方、こちらの慌て様に満足するや、老猫、何事もなかったように桜見物に戻って行った。

花見もそこそこ帰りついては、手当てをしたが…カフカ著『変身』ザムザのごとく、明朝起きれば、猫になっているやもしれません。変身した暁には、自らを撮影し、ここにアップする所存。ご期待あれ!! されども、指も肉球に変っているであろうこと、うまく撮影出来るや否ニャ〜?

末筆ながら、馬橋在住、老猫よ! 本日は、桜見物の真っ只中を邪魔し失礼いたした。桜と龍に惑うたのはこちら、陳謝である。