春宵


窯内の火回りにより、赤くまた紫黒く焼成された備前徳利は、桃山素焼きの伝統を十分に堪能出来る。花入れにも転用されるほどの大きさで、茶懐石の預け徳利に最適と言えよう。口辺に幾重にも刻まれた筋目は、ウィスキーの瓶の口を思わせるが、南蛮の影響か…。

さて、対する酒盃は同じく桃山の黄瀬戸六角、李朝初期の粉引盃。これにたっぷりと酒を注ぐ。

往時に想いを馳せれば、一杯、二杯。明日は雨との予報とか。散りゆく桜を惜しみながら、今宵は更なる盃を傾けよう。