雨を観る 山を観る

久しぶりに鎌倉の料理屋「まき」に足を運んだ。

お通しは枝豆と鰊の甘露煮。鰊はどうも好きになれず、甘露煮も苦手である。これは連れも同様だが、残してはまきさんに申し訳ないと、連れの分まで飲み込んだ。しかし枝豆の塩加減は絶妙。

鰹を頼む。

ふた月ほど前、新橋の寿司屋で素晴らしい鰹を食べた。ここは常連客が多く、いちげんの客がのれんをくぐるに勇気のいる店である。コハダや中トロも無類の美味さであった。が、その後、同じ店で食べた鰹は脂がのっておらず、がっかりしたものだ。

まきさんが笑いながら言う。「いつもいいものが手に入るとは限らない。天候にも左右されるしね。ままならないものですよ」 この日の鰹はまずまずといったところだ。

さて、じゅん菜、鱧のおとしと、夏の味覚を満喫し、出羽桜を2本空けて店を出た。

翌日は湯河原に足をのばした。このところ、連れは腰が痛むらしい。原因は毎日背負うザックのせいだ。仕事の書類は分かるが、分厚い古美術の本、気に入りの酒盃等など肌身離さず。ザックの重量は8キロ以上あるだろう。これで腰を痛めてはいかがなものか。腰痛とともに、その変人ぶりも湯が治してくれればよいが、はてさて。

山あいの湯で露天に浸かる。深い緑に蔽われた山々を雨が包む。裸で雨を観るのが好きである。山を観るのも好きである。心がしんとする。