- 「湯河原の湯は良かったね、とろっとしててさ、また行きたいな」
- 「そうそう、肌もつるつるになった」
- 「でも肝心の風呂場が閉塞的で残念だな」
- 「えっ? 山が見えたよ。高山ばかり登っている人は、低山の連なりが閉塞的に感じてしまうのかな・・・」
- 「ヤマ? 小さな庭が見えるばかりだったが・・・」
女、首をかしげながら、湯殿が掲載されたパンフレットを取り出す。
- 「ややっ!こんな景観はなかったが、内風呂も広いじゃないか?」
- 「なるほど、男湯と女湯は造りが違ったわけね」
- 「そんなあ・・・」
女、携帯を取り上げ、湯宿に確認を入れる。
- 「・・・そうですか、ありがとうございました・・・殿方は偶数日が大きいお風呂だって!」
- 「えっ? じゃあ次の土曜は・・・偶数日だ、やったあ!!」
7月10日、かくして男、山を観ながら湯に浸かり、満ち足りた時を過ごす。