香箱蟹を食べる

先日の鎌倉の茶事に差し入れをいただいた料理屋「ろばた(呂者堂)」を訪ねる。店内には大きな囲炉裏のテーブルがあり、それを囲んで10脚ほどの椅子が並ぶ。炉内には備長炭が赤々と燃え、自在に鉄瓶がかかっている。東京銀座に存在するふるさとといった風情だ。

献立

  • 先付 蓮根・人参の胡麻和え
  • 向う 平目昆布〆 人参・独活・大葉
  • 椀  蕪蒸し 穴子・銀杏・百合根
  • 焼物 鰆味噌漬
  • 進肴 香箱蟹
  • おこぜの唐揚
  • 飯・味噌汁・香物 

焼物は炉内に串を刺し、時間をかけ客の目の前で魚をあぶる、という趣向である。癖のない味は茶懐石でも十分にいける。なかでも香箱蟹は今年食した料理のなかで逸品に値した。

この日の客は2組。囲炉裏の向うでは、二人のご婦人が楽しげに食事をされていた。お一人は近年逝去されたイギリス人陶芸家エドワード・ヒューズ氏の未亡人だと言う。ご婦人たちが支払いを済ませると店には我々だけが残った。主人も炉辺に座り、ゆるりと歓談、先日の茶事を肴に、盃を重ねることになった。

料理の美味さに、いつになく日本酒がすすんだ。過ぎた酒のせいか記憶が曖昧である。先付けも二種であったし、進肴ももう一品あったはずだが、思い出せない。献立に記すことが出来ず、残念である。