鹿島槍ヶ岳

izaatsuyoshi2011-08-15


4年ぶりに鹿島槍に向かう。9日のムーンライト信州(新宿発23:54)に乗車、椅子の上で深い眠りが訪れるのをひたすら待つが、5時間余り浅い眠りを繰り返すのが常だ。

10日、早朝5時過ぎ、信濃大町駅着、天気は上々だ。バスで扇沢へ出て、朝食をとった。食欲はなかったが「もう一つ、食べておけよ!」と連れの指示で、何とかオニギリ2個をほおばる。水を調達し、軽い準備運動を済ませ、7時前出発となった。

盛夏の登山は3000メートルを超える高山であっても、登りはじめは樹林帯をぬける急登が続き、暑さは地上と何ら変わらない。1時間も歩けば身体中汗まみれだ。

針の木雪渓を望んでは、あそこでは涼風が吹き抜けているのだと想像し、自らを励ます。息も絶え絶えの当方の傍らで連れは相も変わらず、確実に歩をすすめている。昨年、あの雪渓で、連れは動けなくなった女性を背負って運んだのだった。

いつもながら種池山荘直下の登りは厳しく、足はいよいよ重くなる。時折聞こえる鶯の声に癒されながらも、辛い登りが続く。しかし種池から爺ヶ岳鹿島槍への道程は、心もおどる稜線歩きだ。体感温度も下がり気分も上々、剣も雄々しい姿を見せる。だから山はやめられないのだ。

さて、冷池山荘に一泊し、翌朝目覚めると霧が深くたれこめていた。今日は展望は望めないだろう。昨夜遅く、雨も降ったようである。

小屋が用意をしてくれた朝食を済ませ、6時半に出発。下山をはじめると冷たい強風が吹きつけ、耳が痛くなった。帽子をかぶらない連れの髪はたちまち霧に濡れ、相変わらずの半ズボン姿に身体は冷え切っている。「大丈夫、心配ない」と言う連れのシャツのボタンを上までしめ、手袋を渡した。これで幾分体温の放射はまぬがれるだろう。

種池山荘周りの今を盛りに咲く花々は、重くしずくをたたえて、一足早い秋の訪れを告げているかのようであった。しかし樹林帯まで下りると、再び下界と変わらない暑さは戻り、汗が噴き出してきた。


2010年8月「背負うもの 雪渓を歩く」 http://d.hatena.ne.jp/izaatsuyoshi/20100811/1281538400