八ヶ岳を歩く

一昨年夏の鹿島槍山行後、体調を崩し山を離れた当方、2年を経て復帰を目指し(あるいは山にケリをつけるため)8月10日早朝、八ヶ岳に向かう。

新宿駅午前7時発の「スーパーあずさ」は指定が取れず、6時前からホームに並ぶ。同行はいつもながらの連れ、本日はどんな珍道中になることやら・・・

茅野駅からは、30分ほどバスに揺られ、美濃戸口へ到着。

八ヶ岳は4度目になる。1度目は晩秋の思わぬ大雪に地蔵の手前で撤退、2度目は文三郎尾根から赤岳を詰め、肩の小屋に一泊、硫黄、赤岳鉱泉へと降りてきた。そして前回、といっても5年も前になるが、麦草峠からオーレン小屋に泊まり、硫黄岳を越えた。

さて今回の予定は、赤岳鉱泉を経て硫黄岳、オーレン小屋泊のスケジュール。しかし、2年振りの山行に足がついていかず、赤岳鉱泉から行者小屋へと行き先を変え、一泊することにした。

途中、連れは私の不甲斐なさに「おまえが山に行きたいって言うからきたんだろう!」と目を三角にして怒り、しまいには呆れ果てて口もきかない。しかし行者小屋に到着すると、幾分機嫌を直してくれたようだ。

小屋からは、阿弥陀、赤岳、横岳、硫黄岳、大洞心が望め、また周囲の森を背負い色鮮やかなテントが並んでいる。夜ともなれば、カンテラを灯したテントが闇の中に幻想的な光景を見せる。

八ヶ岳はこじんまりとして、包んでくれるような森の優しさがあり、壮麗な北アルプスとは違う魅力がある。

夕食は、鳥肉、ズッキーニ、玉葱のトマト煮を主菜に、青菜炒め、スープなどこちらもなかなかのもの。スタッフのキビキビとした対応も気持ちが良かった。

「行者小屋、なかなかいいね。好きになってしまいそう!」と連れ。およそ似合わぬ連れの言葉に大笑いしたものだ。

さて、翌朝、昨日の登山ですっかり自信を無くした私、前に進む勇気も根気もなく、部屋でグズグズ・・・すると連れ「とにかく行けるところまで行ってみようよ!」

連れ提案のルートは二つ、地蔵尾根から赤岳に登頂、硫黄にまわり赤岳鉱泉に下る、もう一つは地蔵尾根、赤岳、文三郎尾根をたどり、行者小屋に降りてくるというもの。

「硫黄のルートは変化がある。文三郎はひたすら下るだけ、つまらないよ。でもおまえが選んでいい」
文三郎から降りよう。登って下るだけでしょ? 硫黄を回る体力がない!」

昨日は私を残し、どんどん先に行ってしまった連れも、今朝は私を先に歩かせ、歩調を合わせてくれている。

しかしこの選択は大きな間違いだった。文三郎尾根は滑りやすく、ストックを意地でも使わない連れは2度も転んだ。

行者小屋から美濃戸口までの下りでは疲労困憊、連れの励ましにも、シラビソの美しい森にも、川のせせらぎにも癒されるものではなかった。

いく年か前の威勢はどこに行ってしまったんだろう。年をとるってこういうこと?・・・もう山を楽しめることはないのかしら。

しかし、これで山行も最後だと決め、しみじみと周囲を見渡せば森の美しさが心に沁みる・・・

すると傍の連れが言う。「次は北アルプスだ!いいねッ!」


2008年7月20日八ヶ岳 煌々たる満月」
http://d.hatena.ne.jp/izaatsuyoshi/searchdiary?of=15&word=%2A%5B%BB%B3%B9%D4%5D