ドクダミの花

曇天の早朝、窓を開けると庭の一隅がぽうっと明るい。

ドクダミの花が満開である。昨夜の雨に打たれ、葉はツヤツヤと輝き、清楚な白い花が一斉にほころんでいる。
この花はこんなにも美しかったろうか。

子供の頃は、ドクダミという名称も何やら恐ろしく、美しいなどとは露ほどにも思わなかった。近づけば独特の匂いに閉口したものだ。この花を好きだという母の気が知れなかった。
花期は5月から7月、古来その匂いから「毒矯め」「毒溜め」と呼ばれ、今の名へと変じた。匂いは薬草としての高い効能を示しているのだろう。

しかし、もっと爽やかな香りであったなら、名前も違っていただろうに。

追記
後年、法師温泉の宿でのこと。廊下の片隅に白い小さな花が生けられていた。野草好きの母もこの花を見たことがないという。宿の人に聞くと八重のドクダミであるそうな。一重のものとまったく違う花の形状に驚いたものだ。