本日晴天

5月3日、6時30分新宿発特急あずさの先頭車両にて、白馬へと向かう。車両間のドアの開閉を手動で行う旧型車両で、近く廃車にでもなるのか、鉄道マニアが停車駅ごとにホームに降り立ち撮影をしていた。

白馬駅からタクシーに乗車、程なく八方尾根のゴンドラ乗場に到着する。ゴンドラ、リフトを乗り継ぎ第1ケルンへ、ここが唐松岳へのとりつきである。スキー場近くの雪はところどころ溶けて、ハイ松の頭が見え隠れしていた。スキーシーズンの終わりを告げているのだ。

空は晴れ渡り、風も凪いでいる。絶好の登山日和だ。陽射しが雪に反射し、眩しさで目がくらんだ。トレースはしっかりしていたが、雪面がゆるくなっており、ところどころにクレバスも見える。登りはアイゼンを装着せず、つま先で雪を蹴りながら歩行する。

高度が上がるにつれ、雪で装った北アルプスの山並みが、その雄姿を見せ始めた。白馬、不帰キレット立山、剣、五龍…数々の名山が、目の前に雄々しく迫ってくる。五龍岳の向う、魅せられてやまない鹿島槍の優美な姿が見える。

唐松の小屋正面には剣岳が鎮座する。ここからの眺めはやや平面的で、急峻な山景も穏やかな顔を見せている。アルコール好きの我々パーティーは、まず剣に乾杯だ。

5月4日、早朝に小屋を出て五龍へと縦走する多くの年配者に出逢った。残雪の高山を行く彼らのパワーに驚くとともに、無事を心から願う。

我々は昨日と同様のルートを下る。アイゼンをしっかりと装着。10年ほど前に買った登山靴の底は磨り減り、次回の山行には新調しなければならないだろう。思いかえせば、未熟なこの身を多くの名山に連れていってくれたものだ。

陽射しを受け、山々は神々しく輝く。吸い込まれそうな大気はどこまでも拡がり、月や星々が瞬く宇宙の存在を実感できる。本日も晴天なり。