苦手料理

izaatsuyoshi2011-05-07


午後7時半、吉兆での夕食、これだけは天候に関係なく予定通りだ。連れは古唐津と粉引双耳盃、ジョッキ代わりに織部松皮菱筒向を携えてきていた。

入り口で馴染みのマネージャーと軽口を交わし、席に着いてすぐにビールを頼んだ。今回はいつものように山行後の達成感があるわけでもなく、ゴルフコースにデビューを飾った満足感があるわけでもない。何か中途半端な心地でグラスをかかげ、文字通りの「とりあえず乾杯!」となった。

突き出しは筍の木の芽和え。甘みのある木の芽餡は香りも高く、ビールとよくあった。

続いてお椀が運ばれてくる。鯛素麺・・・連れの苦手料理のひとつだ。「僕はどうしてもこの鯛素麺というやつが好きになれない、だめだねえ!」と首をかしげてつぶやき、次いでビールで飲みほした。鯛素麺は鯛の香りが出汁に移り、脂も浮く。香り、旨味といえば聞こえはいいが、連れに言わせれば臭味であり、さっぱりとした素麺に合う道理がないとのこと。うなずけるが、これは料理の定番であり好きな方も多いのだろう。

造りは烏賊と海老であった。こうなると日本酒の出番である。先ほどから2つの盃はテーブルの上に待機中だ。「いつも思うが、山に来て海の魚の造りというのも味気ないね」 しかし、造りは懐石になくてはならず、これには文句はつけられない。

美しく盛付けられた吉兆の料理が次々と出される。盃を鑑賞しつつ、酒もすすんだ。

「流石!吉兆、きれいな八寸だね」「白魚の素揚、美味いよ、お酒がすすむな」

「お椀が素麺で、ご飯がサーモン茶漬けか、取り合わせは今ひとつだな」「立原で言えば素麺はおしのぎだね」「しかし、どちらも汁物でお腹がふくれる!」「いつもの炊き込みご飯が食べたかったなあ!」「我々のような酒飲みには今回ばかりは量が多すぎる」

ゴールデンウィーク中の家族連れ向きのメニューなのかな? ほら、小学生がいる」「しかし子どものうちから吉兆とは舌が肥えるだろう、贅沢すぎるね。そのうち、家のごはんを不味いというようになるぞ!」

以上、料理をめぐって実に勝手な会話の一部である。しかし店を出る際、「次は8月に来るよ、よろしく頼む」と連れはマネージャーへの挨拶を欠かさなかった。何を言おうが、この店に来るのが我々の楽しみなのであり、安心して食べられる数少ない店のひとつなのである。

献立

  • 付出し 筍の木の芽和え 
  • お椀  鯛素麺
  • お造  烏賊、海老
  • 八寸  蛍烏賊ほか 
  • 揚物  白魚とタラの芽の素揚げ   
  • 御飯  サーモンの茶漬け
  • デザート フルーツ