『香水 ある人殺しの物語』パトリック・ジュースキント(文春文庫)

香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)

香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)

1985年にドイツで発表された『香水 ある人殺しの物語』は、80年代、ドイツ文学界最大のベストセラーとなり、23カ国で翻訳されたそうだ(2003年時)。日本でも1988年、池内紀氏の訳で刊行されている。

図書館で借りた覚えがある。しかし先週末、古書店で文庫本に見い出したこのタイトルに、記憶の糸を手繰ったが、断片的なイメージしか浮かんでこない。

かくして再読にいたった。

さて、カバーに記されたあらすじは…

18世紀のパリ。孤児のグルヌイユは生まれながらに図抜けた嗅覚を与えられていた。異才はやがて香水調合師としてパリ中を陶然とさせる。さらなる芳香を求めた男は、ある日、処女の体臭に我を忘れる。この匂いをわがものに・・・欲望のほむらが燃えあがる。希代の"匂いの魔術師"をめぐる大奇譚。全世界1500万部、驚異のベストセラー!

翻訳者、池内氏の「文庫本のための訳者あとがき」(2003年)によれば「自分が翻訳した本の中で例外的によく売れた」のだそうである。また、映画化の情報に「十分なドラマ性を持つ小説だが、主役にあたる"匂い"をどうやって表現するのだろう」と訝り、「あとかたもなく消え失せる男。やはり映像よりも、活字を通しての想像にこそふさわしい」と結ぶのである。