井上靖 『星と祭』

定期的に本棚を整理をしたくなるのは何故だろう。ダンボール箱で休息させている本たちを棚に移動し、背表紙を眺めるのが好きなのかもしれない。

そして、純粋にもう一度読みたくなったり、あるいは本屋で出会った時のように新鮮な興味がわいたりして、外出時にカバンに入れる。

井上靖『星と祭』を再読。奈良の仏像を巡っていた頃、登山に励んでいた頃に選んだ1冊だが、もがり(仮葬)や挽歌など、日本における生と死の間の文化を知った。以下、表紙裏面の紹介文。

皎々たる満月の光が、琵琶湖の面に照り渡っていた。架山は船の上で静かに眼を閉じた。湖の北から東にかけて、何体かの十一面観音が湖を取り巻くように立ち並んでいた。…娘よ、今夜から、君は本当の死者になれ、鬼籍に入れ、静かに眠れ。愛する娘を湖の遭難で失った会社社長架山は、その悲しみを癒やすべくヒマラヤで月を観、娘とともに死んだ青年の父親に誘われて、琵琶湖周辺の古寺を巡った。そして今、湖上の月光を身にあびながら、彼の胸に、ようやく一つの思いが定まろうとしていた。… 死者と生者とのかかわりを通して、人間の「死」を深く観照した、文学の香り高い名作。

星と祭 (角川文庫 い 5-4)

星と祭 (角川文庫 い 5-4)