菜の花や


先週末(3/14.15)のこと、銀座日動画廊で、茨城県笠間市主催による「陶炎祭(ひまつり)」のプレ・イベントが開催された。アンテナショップは、近年注目を集めており、利用されている方々も多いと聞く。二日間限定のこのイベントでは、笠間焼と石彫が出品された。
御影石の産地である笠間市では、年に一度、ストーン・エキシビションが開催されているという。出品されるのは福田繁雄らトップ・デザイナーと石職人によるコラボ作品、面白い試みだと思った。ここに展示されているのは、そのほんの一部ということであった。

堤綾子氏の向付を求めた。1928年、香川県丸亀に生まれた彼女は、武蔵野美術学校に学び、抽象絵画の山口長男に心酔していたという。笠間の地を訪れ陶芸に開眼、1967年同地に窯を築いている。古陶磁を研究しておられるのか、購入した向付は、典型的な筆洗形であり、茶を点ててまた良しの寸法である。
早速、赤貝と菜の花の和え物を盛り付けてみた。甘めの酢味噌で和えてなお、菜の花はほろ苦く、早春を愛でる味となった。ひと口食めば、煌々と月に照らし出される菜の花畑が目の前に広がり、蕪村の有名な句が浮かんでくる。
本日の献立は、向うに赤貝、菜の花。盛り付けやすく、料理が映える器であった。煮物椀は春牛蒡を主役にけんちん仕立てとした。焼物は太刀魚、強肴に蚕豆の塩茹でなど。ほころびはじめた桜に寄せ、春を味わう昼下がりである。