敷島の 大和心を 人問はば 朝日に匂ふ 山桜花
戦前に国威高揚の一端を担わされ広く知られるようになった本居宣長の歌。私にとっては小林秀雄の講演テープ(新潮カセット文庫)で耳に馴染んだ歌だ。
壇上の小林は、声高らかに読み上げたものである。問題山積の現代日本、小林はどう評しただろうか。
小林の没後30年を迎えた今春、例年より10日余りも早い桜開花のニュースに、この歌が自然に口からこぼれた。
『敷島の 大和心を 人問はば 朝日に匂ふ 山桜花』
戦中を知る方々には申し訳ないが、声に出して繰り返すほどに、いい歌だ、と思う。そして、朝日に照らされて咲き誇る山桜のように、日本人は明日を生きなければ、と思う。
さて、今年の花見は井の頭恩賜公園へ。吉祥寺を訪れるのは 4年振りである。
公園への道は、相変わらず多くの人でにぎわいを見せていた。学生から高齢者まで皆、桜の開花に気分も高揚してか、足元も浮かれ気味だ。
連れは時々振り返り、はぐれないよう私に声をかける。弁当に塗盆、ブルゴーニュの赤とワイングラス、そして敷物ひと揃いの大きな荷物を携えて、先を行く連れの姿を見失わないよう、私は急ぎ足で歩いたものだ。
ようやくひと気のない池のほとりの桜の下に陣取り、宴の開始だ。苦労して運んだ大きな盆に、ワインボトルやグラスを乗せ、鎌倉彫の二段重箱を開く。
本日、花は八分咲き。花びらが舞い落ちる中に座るのが好きな連れは、幾分物足りなさそうである。
『噴水の音が耳障りだな、管理人に言ってやろうか』などと連れはブツブツ言いながらも、ご機嫌よろしく弁当を頬張り、ワインを飲み干した。
曇り空に時折、陽が差す絶好の花見日和。ワインボトルをきっちり一本あけて、そろそろお開きの頃合いである。『来年は温泉で花見と洒落るか!』とは、これまた気の早い。
献立
『新潮CD 小林秀雄講演 特設サイト』http://www.shinchosha.co.jp/mediashitsu/special/kobayashi/
小林秀雄講演―信ずることと考えること〈講義・質疑応答〉 [新潮カセット文庫] (新潮カセット文庫 小林秀雄講演)
- 作者: 小林秀雄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1985/12/01
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る
『花見の宴(北の丸公園)』2012年4月8日 http://d.hatena.ne.jp/izaatsuyoshi/20120413/1334266451