秘湯の宿と弁当箱

二岐温泉 大丸あすなろ荘にて

2023年8月11日、午前11時08分の東北新幹線なすの号で新白河駅に向かった。福島県二岐温泉の一軒宿、大丸あすなろ荘が目的地である。

さて、私たちの鉄道旅に弁当は欠かせない。この日のメニューは、シラスと獅子唐、梅干のご飯、茄子のポン酢煮、ウィンナーソーセージ、胡瓜とブロッコリーのバジルソース、出汁巻玉子。いずれも連れの好物であるが、今回は留守が続くため冷蔵庫内の食材を使い切り。弁当箱も使い切りで持ち帰る必要はない。

新白河まではおよそ1時間半、弁当をつまみにビールを飲みながらいつもに増して連れの舌は絶好調。おかげさまで目的の駅にはすぐに到着した。

新白河駅東口から二岐温泉まで「ゆったりヤ―コン号」という村営のワゴンバスが一日一往復あり、宿に予約を入れる際に乗車する旨伝えれば手配をしていただける。予約は必須だそうだ。

山道を1時間以上も走ったろうか、大丸あすなろ荘の門が見えた。この日、ヤーコン号の乗車した8人はすべてこの宿の泊り客であったようで、すべての人たちがあすなろ荘の前で下車した。www.motoyudaimaruasunarosou.com

チェックインを済ませ部屋に向かう。予約した部屋には半露天風呂(次の画像)が付いており、常時、湯舟に入れる状態である。

幾年か前の新緑の頃、両親とこの宿を訪ねたことがあった。渓流沿いの露天は清々しく、心地良かった。

だが、この旅の目的は自噴泉岩風呂である。男女の入浴時間は決まっているため、連れより先に岩風呂に向かうことになった。

階段を数段ほど降りると半地下に脱衣所があり、その奥の岩風呂への扉をあけると視線の先に観音像が据えられている。私のほかには誰もいない。

大きな岩の湯舟の底にゆがんだ円形の一段と深い窪みがあり、湯がゆれると吸い込まれそうな気がした。一人ではその神秘的な空間にいたたまれなくなり上がろうしていると、女性が入ってこられた。これでゆっくり湯につかることが出来る。

連れは渓流風呂に向かったが虻がたくさんいて早々に退散し、屋内の大浴場に入ったという。宿の注意書きにもあったが、夏季の虻の発生はいたしかたないのだろう。その代わり、自噴泉岩風呂は満足したようだ。

帰京の朝、宿の土産売り場で曲げわっぱの弁当箱をみつけた。白木の香りに魅かれて、楕円形の二段弁当箱を購入した。以降、味噌汁を入れた保温ボトルとともに私たちの旅に欠かせないものになった。