実家にて
妹を亭主に、7名の客を招いての華甲祝いの茶事。12月24日の年末の多忙の折から、客は4.5名と踏んでいたというが、声をかけた全員に色よい返事がいただけたという。となれば昨年、特注したテーブルは5名分しかなく、追加のテーブルが決まるまで妹夫婦は議論を繰り返した。妹も今回ばかりは甘い考えを反省したようである。
客の数は増えても、亭主・水屋・懐石、計3名の布陣は変わらない。懐石は松花堂弁当にするにしても、1人で7人を迎えるにはアタフタするに違いない。
当日はクリスマスイヴで、献立は洋風に振り切ることにした。
食べることが大好きという方が幾人かおられる。弁当はすぐに食べ終わってしまうかもしれない。不安は次々とわいてくる。
献立
煮物椀
- 蟹と菊花の蒸飯 ロールキャベツ風
強肴
小吸い物椀
八寸
- 鴨の生ハム洋梨 オリーブ菊花
食べることが好きな客のため、チキンソテーには、クリスマスならではとシュトーレンを添える。料理をすすめるうちにマスタード和えのために用意していた真っ赤な林檎が目についた。チキンとシュトーレンのつなぎには林檎のソテーは最適だ。マスタード和えと食材は被るが、どちらも外せなかった。
煮物椀の椀種は蟹飯、コンソメスープで仕立てる。華甲祝いにつき、どこかで蟹と菊花を使いたかった。当初、新約聖書の「奇跡の漁り」にちなみ漁師風リゾットを考えたものの、煮物椀には温かな出汁(スープ)は欠かせない。そこで、甘みの増した冬キャベツで蟹飯を包み、蒸し上げて椀種にしてみた。これなら米が出汁に散らばることもない。見た目は通常の煮物椀の様相。妹は「当意即妙」と褒めてくれるが、最後まで決まっていないということだ。しかし7名分となると私一人には手に負えない。お出しするのが大分遅れてしまった。
預け徳利は赤ワイン、弁当を下げ、フランスパンを使ったキャビアのカナッペを運び出す。これでお腹も満足してくれるだろう。
小吸物椀は蕪や人参などの根菜の出汁にラディッシュのヘタに葉をつけたもの。今回の小吸物椀は小さいもので、八寸を蓋に取り分けられないため、この銀の皿を使ってもらう趣向。八寸は画像の通り。
今回、茶事に参加した友人たちはおひとりを残し、全員が還暦を迎えた。各々の人生には様々な出来事があった。あっという間に子供たちは成人を迎え、我々は第2の人生を迎える頃となった。穏やかな後半生であることを願う。