いせ源

久しぶりにあんこう鍋の老舗「いせ源」に向かう。午後から冷たい雨がぱらついたせいか、順番待ちをする列もなく、すんなりと入店することが出来た。

席に着いて周りを見渡せば、男女の二人連れが多いことに気付いた。三十代の恋人のようであったり、熟年の夫婦のようであったり、年が親子ほども違っていたりするが、総じて女性は色町風の派手ななりをしている。今夜に限ってのことだろうか。

それはさておき、いつものようにきも刺し、煮こごり、唐揚を注文すると「今日はあん刺しがありますが・・・ご用意できる日は少ないのです」と仲居が勧める。「それではいただこう」と連れ。

運ばれてきた皿の上には薄切りの白い身が扇のように広がり、要の部分には小さな頬肉2切れと皮が盛り付けられていた。頬肉は貴重な部位であるそうだ。紅葉おろしとわけぎが添えられている。巻いて食べてもよし、醤油に溶いてもよし。

ビール、日本酒と大いに進み、目に着いたのはベテランに混じり少女のような仲居の姿。目を細くして連れが声をかけると昨春、正社員で就職したと言う。渋い着物もなかなか似合っている。

老舗に初々しい新人を見るのは嬉しいことだ。近くの「かんだやぶそば」も再開した。日本の伝統的食文化の未来を彼女に見る思いがした。

いせ源 http://www.isegen.com/
2011年12月21日記「あんこう鍋 いせ源」http://d.hatena.ne.jp/izaatsuyoshi/20111221