正月 祝いの膳
鎌倉の数寄者、居合仲間を招いての正月の茶事。客は7名、それぞれ持ち寄る料理や食材もあると聞き、当方の用意は御節と雑煮で良いとのこと。それだけなら手慣れたものと、軽い気持ちで引き受けた。
席入りは11時半。亭主はまず酒盃と向う代わりの御節八種の膳を持ちだす。続けて燗鍋を手に客に酒を注ぎ、乾杯して新年を祝った。以降の料理は鉢に盛りつけ取り回しとした。
献立
- 御節八種盛(昆布巻、栗きんとん、酢蓮、松前漬、金柑、銀杏、田作り、花人参)
- 紅白ナマス、たっぷりとイクラをかけて
- 薩摩揚二種(枝豆・玉葱)
- 里芋煮 針柚子
- 紅白蒲鉾(鎌倉井上製)山葵漬けを添えて
- 黒豆
- 酢蛸
- 練り味噌二種(葱味噌、黒酢味噌)半月大根
- カラスミ、酢蓮
- 漬物二種(白菜・沢庵)
- 雑煮(角餅、鶏肉、日の出人参、椎茸、結びミツバ、松葉柚子)
- 主菓子 小倉羊羹(越後屋若狭製)
- 水菓子 洋梨・キウイフルーツ
3〜8,10は客の手土産である。用意した料理と被ったものは手土産を優先させていただいた。黒豆は当方のものよりふっくらと仕上がっており大変美味しかった。里芋煮、白菜の漬物ともに料理上手な母上を持つ客からの差し入れとのこと。
練り味噌に添えた大根は、当初カラスミに用意したもの。急遽、カラスミには酢蓮を添えることにした。何が持ち込まれるのか分からないため機転を要したが、里芋には針柚子を天に盛るなど、それぞれ盛り付けは美しくあったと思う。
雑煮は醤油仕立て、今回は人参をまん丸の小口にした。家では人参、大根は短冊に切り紅白としているが、客は壮年の事業主が多いと聞き、日の出人参、結びミツバと縁起をかついだ。
水屋をよそに、幾度も酒が運ばれる茶室内は宴席と化し、亭主収集の古陶磁の鑑賞の仕方から今年の経済予測まで話しは及んだ。いつまで続くのかと心配になった頃、ようやく中立ちとなった。
茶席を初めて体験する方もいたようでこちらも大変盛り上がっていたようである。仕舞付けの後、これまた客の手土産の洋梨をお出しする。
茶室を辞したのは午後4時、早朝の料理の下拵えから考えると長い一日であった。