猫、参謀となる

箱根には2ヶ月に一度ほども通っているだろうか。このところは広大な池が広がる旧岩崎家庭園に立つホテルを訪れている。

なにしろこの池には幾百もの鯉が生息しており、連れは彼らに餌をやるのが何よりの楽しみなのである。

温泉を出てテレビで女子ゴルフを観戦しステーキハウスで腹を満たせば、庭を散策するに良い時分となった。

さていつもの場所に陣取り餌を手にすると、鯉の王を自称する連れの足元に、参謀を願ってか擦り寄る者がある。それは年若い一匹の猫であった。

連れが足をならせば四方八方から背びれをくゆらせ来る鯉の群れ。餌をまけばカポカポと口を開け我先にと餌を飲み込む。かの参謀は首を伸ばして輩を覗き込み、時折、もっと餌をやれと言うように顔をあげた。

王と参謀のあまりの熱中ぶりに、いつしか池に落ちやせぬかと、当方危ぶむばかりであった。