食道楽

このところ、週末は湯河原で過ごすことが多くなった。先週末は鎌倉の料理屋「まき」で舌鼓をうち、翌日湯河原に向い、とろりとした湯で日頃の疲れを癒した。

「まき」には、以前から話をしていた自家産の味噌を持参した。まずは店の主人に味見をしてもらう。「美味しいですよ!」と一言、合格点をいただいたようである。

すると、美味い味噌をずっと探している、という客の一人が話しかけてきた。麹を2倍使用した自慢の味噌であるだけに、大の味噌好きであるというその男にも味見をしてもらいたかったが、主人はそ知らぬ態である。

他人にひと匙の味見を許さぬほどに気にいってもらえたということか、そうであるなら光栄の限りであるが・・・。そうこうするうちに味噌は奥の方に運ばれてしまい、男もあきらめた様子で話を打ち切った。

先付は、酢〆にした鯵と胡瓜を押寿司にしたもので、暑さの残る夕刻に爽やかな風味であった。続いて鰹をもらったが、この日は脂がのっておらず、残念であった。

同席したもう一人の客は、以前、北大路魯山人の星岡窯を受け継いだ陶芸家のもとで修行をし、今は食道楽がゆえに魚を商っているという趣味人である。「近頃は訪ねていない」と言いながら、魯山人の屋敷跡の様子などを聞かせてくれた。

魚を商うだけあって、この日は大粒の蜆を持参し、主人をねぎらう。「これで精をつけてさ、マキさんいつまでも料理屋、続けてよ!」

この店には、食道楽の貴人(奇人か?)が集うようである。喜寿は過ぎたと聞いている主人にしても、この日の味噌への執着、美味いものへの執念はまだまだ衰えないようだ。

さて、本日(9/20)は自宅で昼食。まずはビール、続いて象嵌青磁と古唐津で日本酒を楽しんだ。

「まきさん、次の朝は美味い味噌汁を飲んだんだろうなあ、○○さんの蜆、逸品だったもんなあ!!」 そうだった、誰にも負けない食道楽が身近に居たのであった。

献立

  • 先付 オクラとメカブ、明太子の和え物
  • 向う コハダ、胡瓜・新生姜の即席漬
  • 焼物 フィレステーキ、ピーマンのパスタ添え